日本大百科全書(ニッポニカ) 「めまい(医学)」の意味・わかりやすい解説
めまい(医学)
めまい / 眩暈
vertigo
眩暈(げんうん)ともいう。一般に、めまいという語は多種多様な症状の表現として非常によく使われる。たとえば、自分の体あるいは外界が回転あるいは上下に動く感じ、体がふわふわする浮動感、ふらふら感、立ちくらみ、眼前がきらきらする感じ、目の前が暗くなる感じ、体が落ち込む感じ、意識が短時間なくなる感じ、脱力感などである。しかし、医学的な定義では、自分の体あるいは外界の物が動くという感じのあるもの、すなわち運動覚や位置覚の異常に関係するものを真のめまいといい、それ以外のものは仮性めまいとよんでいる。めまいのおこり方については過労や感冒、あるいは頭を動かしたり、なにかの要因でおこるものを誘発性めまい、そのような誘因がなくて急におこるものを発作性めまいという。また、めまいの経過により単発性、反復性、一過性、持続性めまいなどに分類することもある。
真のめまいは、身体の平衡をつかさどる機能をもつ内耳の前庭(ぜんてい)および半規管から発する平衡神経系のどこかに病変があるときにおこることが多く、それを末梢(まっしょう)性めまいと中枢性めまいに分類する。末梢性のものは内耳の内リンパ水腫(すいしゅ)(メニエール病)、炎症、循環障害、外傷、薬物中毒、中枢性のものは脳幹や小脳の腫瘍(しゅよう)、循環障害、変性、炎症がおもな原因である。仮性めまいの原因としては貧血、高血圧症、低血圧症、起立性調節障害、頭頸(とうけい)部外傷、急激な視力低下、複視、内分泌疾患などがある。
なお、めまいがあると簡単な検査のみでメニエール病と診断されることが多いが、前述のように非常に危険な疾患もあるので注意が必要である。とくに意識の消失、けいれん発作や頑固な頭痛があるときは、中枢神経疾患の可能性が強い。
[河村正三]