タケシマラン(英語表記)twisted-stalk
liver-berry
Streptopus streptopoides (Ledeb.) Frye et Rigg var.japonicus (Maxim.) Fassett

改訂新版 世界大百科事典 「タケシマラン」の意味・わかりやすい解説

タケシマラン
twisted-stalk
liver-berry
Streptopus streptopoides (Ledeb.) Frye et Rigg var.japonicus (Maxim.) Fassett

亜高山帯針葉樹林の林床に多いユリ科多年草。近縁種オオバタケシマランS.amplexifolius(L.) DC.var papillatus Ohwiとともに,本州中部以北,北海道に分布する。オオバタケシマランには花柄の中央部が,くの字形に屈曲するという変わった性質がある。英名twisted-stalkや中国名扭柄花(ちゆうへいか)は,この性質にちなんだものである。茎は高さ25~35cmで,しばしば二叉(にさ)状に分枝する。葉は卵状披針形で鋭尖(えいせん)頭。平面的に2列互生し,暗い林床で光を受けやすい体制をとっている。花は6月に咲き,葉腋ようえき)から出る細い花柄に1個ずつ着く。花被はやや赤みのある淡い褐色。果実液果で8~9月に熟し,赤くて美しい。タケシマラン属Streptopus(英名twisted-stalk)は北半球温帯亜寒帯に広く分布し,約7種がある。

 ヨーロッパではオオバタケシマランの葉を咳止め用のうがい薬を作るのに用いる。また液果や若い根は食用とされる。漢方では中国産のS.simplex竹林消(ちくりんしよう)と呼んで,滋養健胃・鎮痛および止咳(しがい)剤に用いる。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「タケシマラン」の意味・わかりやすい解説

タケシマラン
Streptopus streptopoides var. japonicus

ユリ科の多年草で,本州の中部および北部の亜高山帯針葉樹林に下草として生じる。地下に長い根茎が走り,高さ 20~50cmの細い茎を出し,2~3回枝分れする。葉は長さ5~10cmの広楕円形で全縁,先はとがる。茎の基部は鞘状にはならない。初夏に,各葉腋に1個ずつ黄緑色の6弁の小花をつける。花柄は細く,1つ上の葉の基部近くまで茎に癒着したうえ,そこで茎から離れて垂れ下がる。果実は球形の液果で赤く熟する。分類学上,本種の母種とされるヒメタケシマラン S. streptopoidesは東アジアの冷温帯に広く分布する種で,背丈は 15~30cmと低く,ほとんど枝分れしない。また葉の縁に細い柱状の突起があり,日本では北海道の針葉樹林中に生じる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「タケシマラン」の意味・わかりやすい解説

タケシマラン
たけしまらん
[学] Streptopus streptopoides (Ledeb.) Frye et Rigg subsp. japonicus (Maxim.) Fassett
Streptopus japonicus Maxim.

ユリ科(APG分類:ユリ科)の多年草。地下を横走する根茎の節からは多数のじょうぶな根を出す。茎は高さ20~35センチメートル、しばしば1、2枝を叉(さ)状に分かつ。茎の上部には毛状の突起がある。葉は卵形または卵状披針(ひしん)形、先は鋭くとがり、基部は円形で無柄。長さ4~9センチメートル、縁(へり)にはまれに微小な突起がある。花期は6月。葉腋(ようえき)から出た長さ1~2センチメートルの細い糸状の花柄の先端に淡赤褐色の花を1個下垂してつける。液果は径約7ミリメートルの球形で、赤く熟す。中部地方以北の本州の針葉樹林内に生育する。

[河野昭一 2018年12月13日]


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