日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハナミズキ」の意味・わかりやすい解説
ハナミズキ
はなみずき / 花水木
flowering dogwood
[学] Cornus florida L.
ミズキ科(APG分類:ミズキ科)の落葉高木。北アメリカ原産で、花が同属のヤマボウシに似るので、アメリカヤマボウシともいう。アメリカヤマボウシとハナミズキの名を混ぜ合わせてアメリカハナミズキという場合があるが、アメリカの名を冠する呼称は適切ではない。高さ5~12メートル。樹皮は灰黒色で縦に溝があり、小枝は緑白色または紫褐色である。葉は短い柄があって対生し、楕円(だえん)形または卵形で長さ8~15センチメートル、先は短くとがり、縁(へり)に鋸歯(きょし)はない。葉裏は白色を帯び、脈上に微毛がある。秋、美しく紅葉する。4~5月、小枝の先に頭状花序をつくり、黄緑色で小さな4弁花を集めて開く。花序の基部に白色で花弁状の大きな総包片が4枚あり、倒卵形で長さ4~5センチメートル、先はへこむ。核果は枝先に数個つき、楕円形で長さ約1.2センチメートル、先端に宿存萼(がく)があり、10月ころ深紅色に熟す。ヤマボウシのような集合果にはならない。前年の秋には、擬宝珠(ぎぼし)状のつぼみが枝に頂生する。
カナダのオンタリオ州、アメリカのマサチューセッツ州からフロリダ州、テキサス州と、メキシコの一部に分布する。アメリカではドッグウッドと称し、バージニア州の州花になっている。日本への導入は、1912年(明治45)、当時の東京市長尾崎行雄(ゆきお)がサクラの苗木をワシントン市に寄贈した返礼として、1915年(大正4)に贈られたのが初めである。現在も、東京の都立園芸高等学校に原木が残っている。園芸品種に、総包片が淡紅色から濃紅色までの変異があるベニバナハナミズキ、果実が黄熟するキミノハナミズキ、総包片が6~8枚あるヤエハナミズキ、葉に淡黄色の斑(ふ)が入るキフハナミズキなどがある。庭園、公園に植栽される。
[小林義雄 2021年3月22日]
栽培
半日陰地でも育つが、日当りのよい、適湿の肥沃(ひよく)地でよく育つ。繁殖は主として接木(つぎき)により、台木はハナミズキまたはヤマボウシの実生(みしょう)苗を用いる。実生は秋に果肉を除いてから、取播(ま)きをする。挿木は発根がよくない。カイガラムシ類や、幹に被害を与えるコウモリガなどの害虫は、発生の初期に防除しないと大きな被害を受ける。
[小林義雄 2021年3月22日]