マツカゼソウ(読み)まつかぜそう

改訂新版 世界大百科事典 「マツカゼソウ」の意味・わかりやすい解説

マツカゼソウ (松風草)
Boenninghausenia albiflora (Hook.) Rchb.ex Meiss.

山地の林縁とくに石灰岩地帯に見られるミカン科の強烈な臭いを有する多年草で,1属1種である。高さ50~80cmに達する。基部は通常,木質化するが,若枝は柔らかく髄は大きい。葉は互生し,2~3回羽状複葉で毛がない。小葉は薄い紙質または膜質で倒卵形または楕円形,長さ1~2cm,先端は円く,基部はくさび形,ふち鋸歯はなく,裏面は灰緑色で腺点が散在する。秋,枝先に集散花序を出し,多数の白色の小花を開く。萼片は4個で長さ約1mm。花弁は4枚,長さ5~6mm。おしべは8本で長短がある。子房に柄があり,果実が熟す頃には子房柄は長さ4~8mmとなる。蒴果(さくか)は四つに分かれ,とがったしわのある数個の種子を含む。日本(本州,四国,九州),台湾,中国からアッサムに分布する。中国では全草を薬用とする。また,ヨーロッパでは観賞用に栽植される。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「マツカゼソウ」の意味・わかりやすい解説

マツカゼソウ
まつかぜそう / 松風草
[学] Boenninghausenia albiflora (Hook.) Rchb. ex Meisn.
Boenninghausenia japonica Nakai

ミカン科(APG分類:ミカン科)の多年草。高さ40~80センチメートル、上方で分枝する。葉は2~3回3出羽状複葉で、5~10センチメートルの柄がある。小葉は倒卵形で先は丸く、質は薄く無毛、油点が散在し、香りがある。8~10月、茎頂円錐(えんすい)花序をつくり、白色の小花を開く。萼片(がくへん)は長さ約1ミリメートル、基部は癒合する。花弁は4枚、長楕円(ちょうだえん)形で長さ3~4ミリメートル。雄しべは6~8本、花弁より長い。子房は4室で、4裂し、長柄がある。日本の特産種で、山地の林内に生え、中部地方以西の本州から九州に分布する。近縁種1種が中国からヒマラヤに分布する。名は、草姿が優しく、松風になびく花に例えたものといわれる。

[小林純子 2020年10月16日]


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百科事典マイペディア 「マツカゼソウ」の意味・わかりやすい解説

マツカゼソウ

ミカン科の多年草。本州〜九州,東アジアの山地にはえ,石灰岩地によく見られる。茎は直立して分枝し,高さ60cm内外,葉は3出状に2〜3回裂け,小葉は倒卵形で柔らかく,油点があって一種のかおりがある。8〜9月,枝先に白色の小さな4弁花を多数開き,のち4個に分かれた果実を結ぶ。

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