収斂薬(読み)しゅうれんやく(英語表記)astringent

翻訳|astringent

改訂新版 世界大百科事典 「収斂薬」の意味・わかりやすい解説

収斂薬 (しゅうれんやく)
astringent

粘膜組織や皮膚の細胞や漿液中のタンパク質を沈殿させて,被膜をつくり細胞膜の透過性を減少させる薬物。浸透性が低いため細胞の表面にのみ作用し,そのため細胞膜の透過性は減少するが,細胞自体は破壊されない。タンニン酸次硝酸ビスマス次没食子酸ビスマスプロテイン銀などがある。下痢止め止血防腐,鎮痛の作用がある。収斂薬は,腐食薬の作用が腐食に至らず軽度にとどまっているものと考えてよい。液体分泌白血球の遊走を抑制する。タンニン酸は,下痢止めに内服したり,やけどの治療に塗布したりしたが,吸収されて肝臓障害を起こすおそれがあるため,現在では用いられなくなった。
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百科事典マイペディア 「収斂薬」の意味・わかりやすい解説

収斂薬【しゅうれんやく】

皮膚または粘膜組織の含窒化合物と結合沈殿して被膜を形成し,局所の保護や体液滲出(しんしゅつ)を抑制する薬剤。主として創面,潰瘍(かいよう)面,粘膜表面などに消炎の目的で用いる。下痢,腸潰瘍などの制瀉(せいしゃ),腸収斂に適用。また止血および制汗などにも応用される。次のような薬剤がある。1.タンニン酸類。タンニン酸,五倍子,没食子酸,2.金属化合物。亜鉛華ミョウバン硫酸アルミニウム,次没食子酸ビスマスなど。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「収斂薬」の意味・わかりやすい解説

収斂薬
しゅうれんやく
astringent

粘膜や皮膚組織の蛋白質を沈殿させ,被膜を形成して局所を保護し,また,局所の血管を収縮させる働きをもつ薬物。代表的なものとしてタンニン酸,エーテル,アルコールでつくった外用収斂性コロジオンや,苦味薬がある。作用機序によって,創面,潰瘍面,粘膜などの炎症用,下痢,腸潰瘍などの粘膜収斂用,止血用,制汗用,皮膚表面の収斂用 (化粧品のアストリンゼン) などに分けられている。

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