地方衛生研究所(読み)チホウエイセイケンキュウジョ

デジタル大辞泉 「地方衛生研究所」の意味・読み・例文・類語

ちほう‐えいせいけんきゅうじょ〔チハウヱイセイケンキウジヨ〕【地方衛生研究所】

地域住民の健康を守るために、食品・医薬品・水・空気などの安全性に関する試験や調査研究を行う機関厚生労働省通達に基づいて各都道府県・政令指定都市などに設置地衛研

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「地方衛生研究所」の意味・わかりやすい解説

地方衛生研究所
ちほうえいせいけんきゅうじょ

地域における保健・衛生業務の科学的・技術的中核を担う公的機関。都道府県、政令指定都市と中核市、特別区の一部に設置されている。略称は衛生研、地衛研。地域によっては環境保全業務なども担っていることもあり、名称は環境衛生研究所、健康安全センターなどまちまちである。地域保健法(昭和22年法律第101号)第4条に基づいて策定された厚生省告示「地域保健対策の推進に関する基本的な指針」に規定された機関である。医師、臨床検査技師、薬剤師、獣医師らが在籍し、(1)地域保健に関する調査・研究、(2)試験・検査、(3)研修・指導、(4)公衆衛生情報等の収集・解析・提供、などの業務を担っている。新型コロナウイルス感染症(COVID(コビッド)-19)など感染症の流行時には、衛生研究所内に感染症情報センターがおかれ、感染の有無を調べるPCR検査などの対策を担う公的拠点の一つとなる。2020年(令和2)時点で全国に83か所あり、全国組織として地方衛生研究所全国協議会がある。

 地方衛生研究所の前身は、明治期から昭和期にかけて地域ごとに設置された警察の細菌研究所、自治体の衛生試験所、ペスト検査所など多様である。1948年(昭和23)に厚生省(現、厚生労働省)が地方自治体に「地方衛生研究所に関する設置要綱」を通知して地方衛生研究所の整備を求め、以後、厚生事務次官通知や厚生省告示などで規定されてきた。ただし直接に規定する根拠法がなく、他の公的機関との役割分担などの法的位置づけがあいまいである。行政改革や地方財政悪化などのため、地方衛生研究所の人員、予算はともに減少傾向にある。2020年からの新型コロナウイルス対策では、PCR検査のほか感染者データの集約、地域住民への情報発信、国への報告などの業務を担ったが、人手や予算の不足から機能不全に陥った研究所もあり、医療関係者はじめ野党や市民団体などから、体制の充実と法的位置づけの明確化を求める声があがっている。

[矢野 武 2020年11月13日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「地方衛生研究所」の意味・わかりやすい解説

地方衛生研究所
ちほうえいせいけんきゅうじょ

全国都道府県および政令指定都市の衛生研究の中核機関として,保健衛生行政に必要な試験検査,調査研究,技術者の研修などを行う研究所をいう。中央では国立感染症研究所が統括業務を行う。近年,食品の安全性とか感染症の監視などの問題が重要になってきたのに伴い,こうした研究所の果す役割は大きくなってきており,1976年の次官通知により設置要綱を改正し,時代の要請に即応した体制の整備が進められている。研究所の施設については 1967年度より,また重要設備については 73年度から年金積立金還元融資の対象となり,施設面の充実がはかられている。

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