塩素化(読み)えんそか(英語表記)chlorination

日本大百科全書(ニッポニカ) 「塩素化」の意味・わかりやすい解説

塩素化
えんそか
chlorination

塩素原子を含む化合物をつくる反応をいう。不飽和結合に塩素原子を付加させる反応と、他の原子あるいは官能基を塩素原子で置換する反応とがある。付加反応の例としては、エチレンに塩素を作用させて1,2-ジクロロエタンを合成する反応がある。

 置換反応の例としては、メタンに塩素を作用させてクロロメタンを得る反応がある。塩素以外にも、塩化水素、金属の塩化物塩化スルフリル塩化チオニルなど種々の塩素化剤がある。工業原料として重要な塩素化合物は、石油から得られる炭化水素を塩素化して製造することが多い。塩素原子を多くもつ化合物は毒性が問題となっており、将来、一部の塩素化反応は行われなくなる可能性がある。

[谷利陸平]

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改訂新版 世界大百科事典 「塩素化」の意味・わかりやすい解説

塩素化 (えんそか)
chlorination

不飽和結合に塩素を付加させる反応および有機化合物中のX-H結合をX-Cl結合に変換する反応をいう。付加反応は,アルケンなどに塩素の四塩化炭素溶液を加えることによって容易に行える。塩素の付加はトランス付加で進行することが知られている。光が必要な場合もある。たとえば,ベンゼンに光を当てながら塩素を通すと,1,2,3,4,5,6-ヘキサクロロシクロヘキサンを生成するが,これは略称BHCで,強力な殺虫作用を示すのでかつて農薬として汎用された。C-H結合をC-Cl結合に置換する方法としては,芳香族化合物の場合,鉄の存在下で塩素を作用させる,脂肪族の場合,光を照射しながら塩素雰囲気下,300℃で行う方法などが工業的に重要である。アミドイミドのN-H結合は,アルカリ性水溶液中,塩素を通ずることによってN-Cl結合に変換される。
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化学辞典 第2版 「塩素化」の解説

塩素化
エンソカ
chlorination

付加反応または置換反応によって塩素を含む化合物を生成する反応の総称.たとえば,エテンに塩素を作用させて1,2-ジクロロエタンを生成する反応,ルイス酸を触媒にしてベンゼンに塩素を作用させてクロロベンゼンをつくる反応など,反応例はきわめて多い.塩素化と同様に,付加反応または置換反応によってハロゲンを含む化合物を生成する反応をハロゲン化と総称する.

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「塩素化」の意味・わかりやすい解説

塩素化
えんそか
chlorination

有機化合物に塩素または塩化水素を作用させて塩素誘導体をつくる反応。 (1) 塩素付加 不飽和化合物に塩素を付加させる反応。たとえばアセチレンに塩素を付加させるとジクロロエチレンが得られ,紫外線を照射しながらベンゼンに塩素を付加させるとベンゼンヘキサクロリドが得られる。 (2) 塩素置換 鉄やヨウ素を触媒としてベンゼンに塩素を作用させると水素原子が塩素原子で置換されてモノクロロベンゼンが生成する。飽和炭化水素でも光の存在で塩素化が起る。塩素誘導体は有機化学工業の重要な中間体である。

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世界大百科事典(旧版)内の塩素化の言及

【ハロゲン化】より

…有機化合物に1個またはそれ以上のハロゲン原子を導入する反応で,ハロゲンの種類によって,フッ素化,塩素化(クロル化),臭素化(ブロム化),ヨウ素化などと呼ばれる。(1)フッ素化 有機化合物のフッ素化は,近年薬理活性化合物との関連で,きわめて多くの反応が開発されている。…

※「塩素化」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」