アセチレン(英語表記)acetylene

翻訳|acetylene

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

化学式 HC≡CH 。無色毒性のある気体カルシウムカーバイドから得られる。不純なものは悪臭があるが,純粋なものはエチルアルコールに似た芳香をもつ。沸点-83.6℃,常温で水には体積でほぼ1:1に溶け,アセトンにはよく溶ける。三重結合をもつので付加反応や重合反応を起しやすい。たとえば水を付加しアセトアルデヒド,ハロゲン化水素を付加し塩化ビニルやフッ化ビニルとなり,これらは合成樹脂,合成繊維の原料となる。さらにレッペ反応により種々の形式の化合物に誘導される。また,三重結合をもつ炭素に結合している水素は金属で置換され,金属アセチリドとなりやすい。酸素アセチレン炎として金属溶接溶断に利用されるばかりでなく,有機合成原料として大量消費される。

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百科事典マイペディアの解説

化学式はHC≡CH。無色可燃性気体。融点−80.8℃,沸点−84.0℃。水に可溶,有機溶媒に易溶。純粋のものは無臭。化学反応性に富み,ハロゲン,ハロゲン化水素,水,シアン化水素などと付加化合物をつくる。酸素や空気との混合ガスは爆発しやすく,アセトンを溶剤としてケイ藻土とともに充填(じゅうてん)したボンベに加圧貯蔵する。アセトアルデヒド,酢酸,塩化ビニル,酢酸ビニルなど多くの合成化学原料であったが,アセチレン系誘導体の多くは,石油化学工業で生産されるエチレン,プロピレンからも合成ができるため,アセチレン系合成化学は,1960年―1970年代の石油化学全盛時代を機に不振となった。溶接・溶断用の燃料,アセチレンブラック(カーボンブラックの一種)の原料としても用いられる。カルシウムカーバイドに水を作用させるか,メタンや石油ガスの熱分解によりつくられる。→酸素アセチレン炎
→関連項目ガス化学工業カーバイド石炭化学石炭化学工業

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世界大百科事典 第2版の解説

三重結合をもつ不飽和鎖式炭化水素(アルキン)のうちで最も簡単なもの。化学式HC≡CH。1836年にイギリスのH.デービーによって初めて見いだされた。工業的には,カルシウムカーバイド(カーバイド)から製造されるか,または石油の高温熱分解法によって製造される。おもな用途は,火用,溶接用,合成化学原料などである。
[性質]
 常温・常圧下では無色,無臭の可燃性の気体で,沸点-83.6℃。カーバイドに水を加えて発生させたアセチレンは,微量の不純物を含むため特異な臭気をもっている。

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大辞林 第三版の解説

可燃性の無色の気体。化学式 C2H2 炭化カルシウム(カーバイド)に水を注ぐと生じるが、このとき微量の不純物を含むため特有の匂いがある。工業的には天然ガス・ナフサを高温で分解してつくる。燃焼時に高温を出すので、照明・溶接・切断に利用する。合成樹脂・合成繊維・合成ゴムなど多くの有機化合物を合成する化学工業原料として重要。エチン。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

アルキン(アセチレン系炭化水素)のもっとも簡単なもの。正式な命名法に従うと、エチンethyneというが、慣用名のアセチレンが頻用される。天然には存在せず、1836年イギリスの大化学者H・デービーのいとこであるデービーEdmund Davy(1785―1857)により発見された。
 無色で純粋なものは無臭の気体。元来は炭化カルシウム(カルシウムカーバイド、生石灰を無煙炭またはコークスと電気炉中で加熱して製造)に水を作用させて製造した。この方法で得られるアセチレンは不純物のため悪臭を有する。現在、工業的には天然ガスやナフサなど石油からの炭化水素を高い温度で熱分解して製造する。その分子は次のような直線状の構造をとる。

炭素‐炭素三重結合の間隔は二重結合よりも短く、またそれに結合する水素との結合間隔もエチレンの場合のそれよりも短い。
 常温ではほぼ同体積の水にしか溶解しないが、アルコールやベンゼンなどの有機溶媒には溶け、とくにアセトンにはよく溶ける。アセチレンは高圧で分解しやすいため、珪藻土(けいそうど)にしみ込ませたアセトンに加圧して溶かし、ボンベで運搬する。
 アセチレンは燃焼すると発熱量が大きいので、酸素と混ぜて酸素アセチレン炎として、鉄の溶接や切断に用いる。また空中で点火すると、輝きの強い炎で燃えるので、夜店などでアセチレンランプとして用いられる。しかし、アセチレンの酸素または空気との混合ガスはきわめて爆発しやすいので、取扱いには充分の注意が必要である。アセチレンが空気中に2.5~81%含まれていると爆発する。
 アセチレンは三重結合をもつので、付加や重合をおこしやすい。水と付加すればアセトアルデヒドを生じる。ハロゲンやハロゲン化水素と付加して1,2-ジハロエチレンや塩化ビニルなどのハロゲン化オレフィンを生ずる。また適当な触媒を用いてアセチレンを加圧下で反応させるレッペ反応により、さらに多くの付加反応を行うことができる。アセチレンの水素原子は酸性であるので、金属で置換されやすく、金属アセチリドを生ずる。しかし、銀や銅などの重金属のアセチリドは爆発性である。
 かつて石炭を利用していたころには、石炭を原料として、安価な電力を用いてカーバイドを生産し、これからアセチレンを製造し、それを原料として合成繊維やプラスチックを製造する工業が盛んであり、そのための工場も電力、石炭、石灰石を得やすい場所に立地した。1950年代、アセチレンに水を付加させてアセトアルデヒドを製造する工程で、触媒として用いた水銀化合物が環境の深刻な汚染をもたらした。しかし、現在では石油化学工業の発達に伴い、エチレンにとってかわられた。[徳丸克己]

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精選版 日本国語大辞典の解説

〘名〙 (acetylene)
① アセチレン系炭化水素の一つ。化学式 C2H2 無色の有毒性気体。カーバイド(炭化カルシウム)に水を加えると得られる。工業的には石油、天然ガス、コークス炉ガスなどからの低級炭化水素類を高温で分解して製造する。酸素との混合ガスは爆発性がある。灯火用・溶接用に用いるほか、工業用薬品、合成樹脂、合成繊維、合成ゴムなど、化学工業原料としても重要。アセチレンガス。エチン。
※一千一秒物語(1923)〈稲垣足穂〉月のサーカス「アセチレンの灯が暗いのでよく判らなかった」

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化学辞典 第2版の解説

C2H2(26.04).HC≡CH.エチン(ethyne)ともいう.実験室的には,カーバイドから製造される(カーバイドアセチレン).工業的には,おもに石油系炭化水素の火炎分解法(あるいは蓄熱炉法部分燃焼法,アーク分解法)によって製造される(石油アセチレン).無色で,ほとんど臭いのない気体.融点-81.8 ℃,沸点-83.6 ℃.臨界温度35.2 ℃.臨界圧力60.6 atm.生成熱(25 ℃)226.3 kJ mol-1.燃焼熱(25 ℃)1261.5 kJ mol-1.爆発範囲(空気中,1 atm)2.5~80.5体積%.水1容に1.1容(15 ℃),アセトン1容に25容(15 ℃)溶ける.アセチレンは酸素で燃焼させると3000 ℃ を超す温度が得られるので,溶断用に使用されている.圧縮すると分解爆発を起こしやすいために,容器へ直接圧縮充填せずに,木炭などの多孔質物質を高圧容器内に詰め,これにアセトンを溶媒として浸み込ませたものにアセチレンを溶解充填して使用する(溶解アセチレン).銅,銀および水銀などの金属と直接反応して,爆発性のアセチリドを生成する.かつては各種有機化合物の合成原料として用いられたが,石油化学工業の発展に伴い,エテンプロペンなどにとってかわられた.[CAS 74-86-2]

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世界大百科事典内のアセチレンの言及

【ガス化学工業】より

…ガスを原料とする化学工業のことであるが,一般には,天然ガスを原料として有機化学工業の中間原料であるメタノール(メチルアルコール),アセチレンアンモニアなどを製造する分野をいう。ガス化学工業という分類は日本特有のものである。…

※「アセチレン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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