宝巻(読み)ほうかん(英語表記)bǎo juàn

精選版 日本国語大辞典 「宝巻」の意味・読み・例文・類語

ほう‐かん ‥クヮン【宝巻】

〘名〙 大切な本。貴重な図書
※東京灰燼記(1923)〈大曲駒村〉一五「遂に図書館猛火が闖入して、其中に収蔵された七十六万余の宝巻が」

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改訂新版 世界大百科事典 「宝巻」の意味・わかりやすい解説

宝巻 (ほうかん)
bǎo juàn

中国の〈講唱文学〉に属する通俗な語り物。唐代の〈俗講〉,宋代の〈説経〉の流れを引く歌い語りの講釈で,仏典仏教説話に取材したもののほか,道教の神々の本地ものや,古くからの民間説話仏教的に潤色したものなど,その内容は雑多である。これがいつごろから民間で行われるようになったかは,それの古い確かなテキストが現存しないため明らかではないが,明・清の時代には,都市や郷村で主として年輩の尼によって語られることが多く,清代末期にはそれが安価な石印本として多量に出版された。その種類は優に100種を超える。その文体は,語りと歌とを交互にまじえながら,偈(げ)や称名念仏を挿入しつつ,波乱と曲折に富んだ筋立の物語を構成する。かつてこれの収集と研究に努めた鄭振鐸の言によれば,中華民国の代になっても,とくに江蘇浙江の地方では,これの口演が一種の職業として盛行し,婦女子に対する感化は甚大であったという。現存のものの概略については,鄭振鐸の《中国俗文学史》下巻と,同じく《中国文学研究》中の〈仏曲叙録〉に記述があり,また沢田瑞穂《宝巻の研究》は,鄭振鐸の扱ったもの以外の資料をも含んでさらに詳しい解説を提供する。
唱導 →変文
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「宝巻」の意味・わかりやすい解説

宝巻
ほうかん
bao-juan

中国,講唱文学の一形態。唐代の中期以後,都市の寺院で俗人に向ってする説法 (いわゆる俗講 ) が流行し,それがのちに種々の題材を扱う講談に発達したが,宝巻はその俗講の直系で,仏教の教理,経典,因縁談などを通俗的に解釈した物語を地の文と歌詞を結合させて講唱した。元代頃から流行したと考えられるが,明,清代になって道教などの新興宗教が宣教にこの形式を利用し,さらに民間伝説を宝巻体に改作した『雷峰塔宝巻』『孟姜 (きょう) 女宝巻』などの作品が多く作られた。

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世界大百科事典(旧版)内の宝巻の言及

【白蓮教】より

…また明代に入ると,白蓮教系の諸教団では,布教のための経典が製作されるようになった。この通常,宝巻と呼ばれる経典のなかには,〈真空家郷〉〈無生父母〉の語が見られ,明末から清代にかけては白蓮教の〈八字真言〉といわれるようになった。この〈八字真言〉は,民衆が,現実の父母や家・故郷との関係,すなわち地縁的・血縁的関係を否定して反体制的行動に身を投じる際に有力に働いた思想である,という見方も行われている。…

※「宝巻」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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