俗講(読み)ゾッコウ(英語表記)sú jiǎng

デジタル大辞泉 「俗講」の意味・読み・例文・類語

ぞっ‐こう〔ゾク‐〕【俗講】

中国、唐代に行われた仏教講釈仏教説話を描いた絵や韻文を用いるなどして平易に説いたもので、その台本を変文という。宋・元代には仏教を離れ、講談から通俗小説に発展した。

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精選版 日本国語大辞典 「俗講」の意味・読み・例文・類語

ぞっ‐こうゾク‥【俗講】

  1. 〘 名詞 〙 中国、唐代に発達した法話。はじめは仏典を講じたが、次第に絵を見せたり歌を入れたりして興味本位となり内容も仏教から離れ、宋元代に講談から通俗小説に発展した。→変文
    1. [初出の実例]「勑於左右街七寺、開俗講左街四処」(出典入唐求法巡礼行記(838‐847)三)

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改訂新版 世界大百科事典 「俗講」の意味・わかりやすい解説

俗講 (ぞくこう)
sú jiǎng

中国,唐代の中期(9世紀)以降に寺院盛り場で語られた講釈。俗とは通俗の意ではなく在俗の一般大衆のこと。したがってこの名称は僧侶が本来その語り手であったことを示す。その淵源は,仏説を平易に語り聞かせた〈唱導〉という通俗説法に求められるが,唐代ではこれが芸能にまで発展するにいたった。ただし唐代の俗講には三つの種類があった。第1は詔勅によって定められた日に選ばれた寺院で催されるそれで,例えば入唐僧の円仁が記録している長安での七つの寺の俗講がそれで(《入唐求法巡礼行記》会昌元年(841)の条),《華厳経》や《法華経》などが講ぜられている。その講述の儀式次第についても円仁の綿密な記録があり,これが六朝以来の〈講経〉の継承であることがわかる。第2は寺院で定期的に開かれたそれで,例えば長安の保唐寺で毎月八の日に開かれた俗講には,妓女までも大勢聞きに行ったという(《北里志》)。

 第3は盛り場に設けられた〈変場〉という寄席で語られたそれで(《酉陽雑俎(ゆうようざつそ)》前集巻五),ここでは仏教談義ではない講釈も行われた。ただし円仁が記す長安第一のタレント俗講僧の文などは,《因話録》によると仏典にかこつけて淫穢なことばかり語ったというから,実際には〈変場〉のような市中の演芸場と変りのない内実のものだったらしい。唐末の李賀の詩には妓女が王昭君の悲話を,吉師老の詩には女の旅芸人がやはりその物語を,それを絵にした画巻を繰り広げて聴衆に示しながら語りうたったことを詠んでおり,また釈迦の降魔の話を語ったものには絵の付いた巻物が現存するし,目連尊者が母を地獄から救う物語の写本には〈幷(あわ)せて図一巻〉という題がある。敦煌の壁画にも,それが絵解き的に語られるような配置で描いたものがある。しかし次の宋代では純粋の口誦芸能となり,《洛陽搢紳旧聞記》に記す俗講僧の雲弁もそうであり,都市の寄席で語られた講釈にいたって純然たる説話文学となった。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「俗講」の意味・わかりやすい解説

俗講
ぞくこう
Su-jiang

中国の仏教儀礼。俗人に対する仏典講釈のこと。この語の初出は唐の貞観年間 (627~649) であるが,その内容は東晋の道安の頃までさかのぼることができる。仏典を俗人に講釈する場合には,わかりやすくし,かつ飽きさせないための工夫が必要であった。皇帝,貴族や士大夫という知識人を聴衆としている間はよかったが,一般民衆を相手とする場合には絵解きや節をつけての読経も必要となり,次第に卑俗に流れていった。宋の頃になると,俗講は「卑俗の講釈」の意味にもなり,説経僧の間から,後世の講釈師の原型が生れることになった。

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世界大百科事典(旧版)内の俗講の言及

【小説】より

…また一方で唐の中ごろから,都市の盛り場で語り物が口演され始めた。それには〈市人小説〉と呼ばれる歴史講談を主としたものと,寺院で定期的に語られた〈俗講〉という,主として仏典や仏教説話を講釈したものとがあった。後者は〈変文〉と呼ばれる読み物として20世紀はじめにその写本が敦煌から大量に発見された。…

※「俗講」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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