デジタル大辞泉
「年増」の意味・読み・例文・類語
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とし‐ま【年増】
[1] 〘名〙 娘盛りを過ぎて、やや年をとった女性。
江戸時代では二〇歳前後を年増、
二三、四歳から三〇歳までを中年増、それより上を大年増といった。
※
咄本・軽口御前男(1703)四「是は大きなとしまじゃ」
※縮図(1941)〈徳田秋声〉時の流れ「この世界では、二十二三ともなれば、それはもう年増の
部類で」
[2]
歌舞伎所作事。
常磐津。三世桜田治助作。五世岸沢式佐作曲。三世藤間勘十郎
振付。天保一〇年(
一八三九)江戸
中村座初演。四世中村歌右衛門の江戸八景の変化舞踊「
花翫暦色所八景(はなごよみいろのしょわけ)」の一つ。
向島で、かごから出たいきな妾
(めかけ)がほろ酔い機嫌で踊る。
[
補注](1)単に
年上という意味の「としまし」「としまさり」に基づく。これらが、
遊廓で盛りを過ぎた遊女に対して用いられるようになって、「としま」として定着した。遊廓では、
狭義には二四、五歳あたりからを指すと思われる。
(2)「年増
(トシマ)の
ボイが這入って来て」〔百鬼園随筆‐一等車〕のように男子に用いている例もある。
とし‐まし【年増】
〘名〙
※三体詩素隠抄(1622)一「我より年
(とシ)ましを、
従兄と云ぞ」
③ 年々程度がまして行くこと。
※火の柱(1904)〈
木下尚江〉二「年増
(トシマ)しに世の中がひどくなるよ」
とし‐まさり【年増】
〘名〙
① 年長であること。年上。年増し。
※
浮世草子・紅白源氏物語(1709)二「
光君は今年
二八にならせ給、あ
ふひの上は二十二さいよっぽどのとしまさり」
②
年齢よりふけていること。年まし。〔日葡辞書(1603‐04)〕
③
厄年にあたる時、厄を払うために人に物を贈って祝うこと。
※御湯殿上日記‐文明一〇年(1478)九月二一日(頭書)「御としまさりのかちん大すもしよりまいる」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
年増 (としま)
歌舞伎舞踊の曲名。常磐津。1839年(天保10)3月,江戸中村座で4世中村歌右衛門により初演。八変化所作事《花翫暦色所八景(はなごよみいろのしよわけ)》の一曲。作詞3世桜田治助。作曲5世岸沢式佐。振付2世藤間勘十郎。舞台は,桜散る向島の土手。駕籠から出た年増は,深川芸者上がりの囲い者という設定で,今の男を他の芸者と張り合ったいきさつを1人で描く。この〈しゃべり〉と呼ばれる仕方話が特色で,あだな風情のもの。
執筆者:如月 青子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
年増
としま
歌舞伎舞踊曲。常磐津。本名題『花翫暦色所八景 (はなごよみいろのしょわけ) 』。3世桜田治助作詞,5世岸沢式佐作曲。天保 10 (1839) 年3月江戸中村座で2世藤間勘十郎の振付で,4世中村歌右衛門が初演した。江戸八景の八変化舞踊の一つ。前の助六の扮装から早替りで,駕籠の中からあだな囲い者となって出る。ところは,晩鐘の鳴る夕刻の隅田堤。もとは芸者で,いまは妾の年増女が,深川芸者の頃のだんなとの思い出を仕方噺でみせる。近世後期の所作事のなかでは,『文売り』 (文政3〈1820〉) とともに噺の芸で知られる。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
年増
(通称)
としま
歌舞伎・浄瑠璃の外題。- 元の外題
- 花翫暦色所八景
- 初演
- 天保10.3(江戸・中村座)
出典 日外アソシエーツ「歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典」歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典について 情報