年増(読み)トシマ

デジタル大辞泉 「年増」の意味・読み・例文・類語

とし‐ま【年増】

娘盛りを過ぎた女性。一般に30歳代半ばから40歳前後までの女性をいう。江戸時代には20歳前後を年増、20歳を過ぎてから28、9歳ぐらいまでを中年増、それより上を大年増といった。
[類語]中年増大年増

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精選版 日本国語大辞典 「年増」の意味・読み・例文・類語

とし‐ま【年増】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙 娘盛りを過ぎて、やや年をとった女性。江戸時代では二〇歳前後を年増、二三、四歳から三〇歳までを中年増、それより上を大年増といった。
    1. [初出の実例]「是は大きなとしまじゃ」(出典:咄本・軽口御前男(1703)四)
    2. 「この世界では、二十二三ともなれば、それはもう年増の部類で」(出典:縮図(1941)〈徳田秋声〉時の流れ)
  2. [ 2 ] 歌舞伎所作事。常磐津。三世桜田治助作。五世岸沢式佐作曲。三世藤間勘十郎振付。天保一〇年(一八三九)江戸中村座初演。四世中村歌右衛門の江戸八景の変化舞踊「花翫暦色所八景(はなごよみいろのしょわけ)」の一つ。向島で、かごから出たいきな妾(めかけ)がほろ酔い機嫌で踊る。

年増の補助注記

( 1 )単に年上という意味の「としまし」「としまさり」に基づく。これらが、遊廓で盛りを過ぎた遊女に対して用いられるようになって、「としま」として定着した。遊廓では、狭義には二四、五歳あたりからを指すと思われる。
( 2 )「年増(トシマ)ボイが這入って来て」〔百鬼園随筆‐一等車〕のように男子に用いている例もある。


とし‐まし【年増】

  1. 〘 名詞 〙
  2. としまさり(年増)
    1. [初出の実例]「我より年(とシ)ましを、従兄と云ぞ」(出典:三体詩素隠抄(1622)一)
  3. としまさり(年増)日葡辞書(1603‐04)〕
  4. 年々程度がまして行くこと。
    1. [初出の実例]「年増(トシマ)しに世の中がひどくなるよ」(出典:火の柱(1904)〈木下尚江〉二)

とし‐まさり【年増】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 年長であること。年上。年増し。
    1. [初出の実例]「光君は今年二八にならせ給、あふひの上は二十二さいよっぽどのとしまさり」(出典:浮世草子・紅白源氏物語(1709)二)
  3. 年齢よりふけていること。年まし。〔日葡辞書(1603‐04)〕
  4. 厄年にあたる時、厄を払うために人に物を贈って祝うこと。
    1. [初出の実例]「御としまさりのかちん大すもしよりまいる」(出典:御湯殿上日記‐文明一〇年(1478)九月二一日(頭書))

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改訂新版 世界大百科事典 「年増」の意味・わかりやすい解説

年増 (としま)

歌舞伎舞踊の曲名。常磐津。1839年(天保10)3月,江戸中村座で4世中村歌右衛門により初演。八変化所作事《花翫暦色所八景(はなごよみいろのしよわけ)》の一曲。作詞3世桜田治助。作曲5世岸沢式佐。振付2世藤間勘十郎。舞台は,桜散る向島の土手。駕籠から出た年増は,深川芸者上がりの囲い者という設定で,今の男を他の芸者と張り合ったいきさつを1人で描く。この〈しゃべり〉と呼ばれる仕方話が特色で,あだな風情のもの。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「年増」の意味・わかりやすい解説

年増(歌舞伎舞踊)
としま

歌舞伎(かぶき)舞踊。常磐津(ときわず)。3世桜田治助(じすけ)作詞。5世岸沢式佐(しきさ)作曲。2世藤間勘十郎振付け。1839年(天保10)3月江戸・中村座で、4世中村歌右衛門(うたえもん)初演の江戸八景を題材にした八変化(へんげ)舞踊『花翫暦色所八景(はなごよみいろのしょわけ)』のうち、「隅田堤に旁妻の晩鐘(かくしづまのばんしょう)」の場面が独立したもの。晩春の向島(むこうじま)の土手を背景に、芸者出身の妾(めかけ)とみられるあだな年増の姿を描いた作。駕籠(かご)から現れた年増が、自分の男を別の女と争ったいきさつを物語るところが見せ場で、常磐津舞踊独特の仕方話の振(ふり)に、踊り手の技量が示される。現代では6世歌右衛門、7世中村芝翫(しかん)、4世中村雀右衛門(じゃくえもん)らが得意としている。

[松井俊諭]


年増(女性)
としま

娘盛りを少し過ぎた女性をいう。江戸時代以来使われることばであるが、固定した年齢的区分があるわけではなく、時の社会情勢や時代によって違いがある。結婚年齢が若く、早熟な社会生活を送った江戸時代では、17、8歳から22、3歳までの新造に対し、24、5歳から30歳前後の女性を年増とよび、それより上を大年増といった。現在では、一般的に30歳前後から40歳ころまでの女性をいう。

[棚橋正博]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「年増」の意味・わかりやすい解説

年増
としま

歌舞伎舞踊曲。常磐津。本名題『花翫暦色所八景 (はなごよみいろのしょわけ) 』。3世桜田治助作詞,5世岸沢式佐作曲。天保 10 (1839) 年3月江戸中村座で2世藤間勘十郎の振付で,4世中村歌右衛門が初演した。江戸八景の八変化舞踊の一つ。前の助六の扮装から早替りで,駕籠の中からあだな囲い者となって出る。ところは,晩鐘の鳴る夕刻の隅田堤。もとは芸者で,いまは妾の年増女が,深川芸者の頃のだんなとの思い出を仕方噺でみせる。近世後期の所作事のなかでは,『文売り』 (文政3〈1820〉) とともに噺の芸で知られる。

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歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「年増」の解説

年増
(通称)
としま

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
元の外題
花翫暦色所八景
初演
天保10.3(江戸・中村座)

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