建築限界(読み)けんちくげんかい(英語表記)structure clearance

日本大百科全書(ニッポニカ) 「建築限界」の意味・わかりやすい解説

建築限界
けんちくげんかい
structure clearance
construction gauge

列車や自動車などの車両走行支障をきたさないように、線路道路の横断面上の空間に設定された建造物等の位置に対する寸法上の限度をいう。

(1)鉄道 列車の運転中、運転手の前方確認、車掌合図などのとき、身体の一部を車両の外側に露出することがある。また、乗客が窓から顔や手を出すことも予想しなければならない。したがって、車両の外側には安全な空間が要求される。線路に近接する建物信号機、工事用の仮設物、トンネル樹木などは、設定された限界より線路側に入れてはならないという制限が必要となる。これが建築限界で、「建築限界内には、建物その他の建造物等を設けてはならない」と「鉄道に関する技術上の基準を定める省令」(平成13年国土交通省令第151号)に規定されている。建築限界は軌道の中心を基準とし、車両の断面を定めるときの基準となる車両限界に若干の余裕を見込んだものである。車両の走行と旅客および係員の安全に支障を及ぼすおそれのないように設定されている。

[大澤伸男]

(2)道路 大型自動車の走行、走行中の自動車からの身体の露呈などに対処するために、道路構造令(昭和45年政令第320号)で規定されている。車道だけではなく、歩道についても円滑な通行を確保するために、同じ道路構造令のなかに建築限界が設けられている。

[吉川和広]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「建築限界」の意味・わかりやすい解説

建築限界
けんちくげんかい
restriction boundary of building

交通の安全を確保するため道路,軌道,鉄道上において障害となる工作物や構築物の設置が許されない空間範囲をいう。また,工場建物などに設置される天井クレーンの装置が必要とするクレーンレール上の空間寸法やレールから外側の空間寸法などによって規制され,その範囲内に建築物の部分の存在が許されない限界のこともいう。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

百科事典マイペディア 「建築限界」の意味・わかりやすい解説

建築限界【けんちくげんかい】

鉄道車両の安全な走行のため,線路に隣接する建物・信号機・電柱などの構造物は一定の範囲を越えて造ってはならないという限界。車両に対する車両限界と対になって安全走行が確保される。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

世界大百科事典(旧版)内の建築限界の言及

【鉄道車両】より

… 鉄道車両の重量は,日本国有鉄道(現JR)においては客貨車の軸重(1軸当りの重量)は13t以下,機関車で16t以下,新幹線電車では16t以下(東海道,山陽),または17t以下(東北,上越)を標準としているが,ヨーロッパでは最大20~25t,アメリカでは30t以上のところもある。
[車両限界と建築限界]
 鉄道車両を運転する場合,車両の各部が線路上,あるいは線路に沿って設けられた建造物に触れては困るので,建造物の位置と車両の大きさは一定の限界が互いに関連をもって定められている。前者を建築限界,後者を車両限界という。…

【道路】より

… 自動車や歩行者の安全な通行を確保するために,電柱,信号機,樹木等が道路上にはいってはいけない空間を定めている。これを建築限界といい,高さについては,車道の場合,自動車の走行中の揺れと積荷の形,道路の補修による舗装の厚さの増加を考慮して4.5mと規定され,歩道では2.5mが一般的である(図3)。 橋,トンネル等の構造物は道路の一部としてこれと一体となって効果を発揮するように設計する。…

※「建築限界」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android