日本大百科全書(ニッポニカ) 「植木(園芸樹木)」の意味・わかりやすい解説
植木(園芸樹木)
うえき
人工的に栽培、管理されている園芸樹木をいう。用途や目的により植木として用いられる樹種は異なるが、美しい緑の葉をもち、あるいはその葉色が変化し、まとまった樹冠を形成し、また乾燥や湿気、温度変化、病害虫などに強いものが植木として望ましい。植木が半完成木あるいは完成木となるまでには、苗木増殖(実生(みしょう)、挿木、取木、株分け)、苗木仕立て、肥培管理などの手順を経るので、移植や手入れが容易であることも植木の条件の一つである。樹種選定にあたっては、植付け場所によって、日当りのよい所を好む陽樹であるか、多少日当りが悪くとも生育する陰樹であるか配慮を要する。また地方によって気候風土にあった代表樹種がある(たとえば、山陰や四国のクロマツ、東海地方のイヌマキ、関東のツゲ、北海道のカツラ等々)。種類は大きく分けて、常緑樹、落葉樹、花木、タケ・ササ類がある。形状からは高木、中木、低木に分けられ、低木は仕立てにより株物と玉物に区別される。
[堀 保男]
植付け
常緑樹では春と秋が適期で、落葉樹は落葉後の秋から新芽の出る前の春までがよい。植付けに際しては植木の根ばちより大きい植え穴を掘り、穴に堆肥(たいひ)、腐葉土などの有機物を入れ、その上にすこし間土(かんど)を入れて、肥料が根に直接触れないようにする。植木を植え穴に納めたら、土ぎめ、水ぎめといってすこし土を入れ、根ばちとよく混合するように水を入れて棒で突きながら土をかける。植付けが終わったら支柱を立てて倒れないようにする。
[堀 保男]
手入れと病害虫防除
若木のうちは生長が旺盛(おうせい)で徒長枝、交差枝、車枝(くるまえだ)が出やすいので、年2回程度刈り込みを兼ねて整枝剪定(せんてい)し樹形をつくる。時期は、常緑樹は新芽の出るころから梅雨ごろまでに、落葉樹は新葉の出る前と梅雨ごろに一度徒長枝をとり樹冠を整える。施肥管理は、冬期は有機物(堆肥、鶏糞(けいふん)、油かすなど)、成長期の春から秋にかけては化成肥料を主として用いる。植木の葉は病害虫に侵されると美しさを損ない生育も悪くなるので、冬期から秋まで定期的に殺虫剤、殺菌剤を散布して予防と防除を兼ねておく。
[堀 保男]
移植上の作業
大きな木や数年以上植え込まれた木は、太根が切られるため移植がむずかしいので、根回しといって1年前に幹の直径の2~3倍のところを円形に根切りして細根が出るようにしておくと、翌年移植しても活着しやすい。掘り上げるときには根に土が十分ついているのが望ましく、土を振るい落とすと移植いたみが激しいので、根についた土を落とさないように根を巻くことを根巻きといい、土に根を絡ませて藁縄(わらなわ)で締めて根ばちをつくる。
植木としての花木は花芽分化の時期があるので、整枝剪定はその性質をよく知り尽くしてから行うのがよい。花期終了後に行うと安全なものが多い。
[堀 保男]
『上原敬二著『樹芸学叢書』全8巻(1961~68・加島書店)』