正式名称は「石綿による健康被害の救済に関する法律」(平成18年法律第4号)であり、通称として「アスベスト救済法」ともよばれる。石綿(アスベスト)を吸入したことによる健康被害が社会問題となったことを受けて、環境省と厚生労働省の主導によって制定された法律。2006年(平成18)2月成立、同年3月施行。本法は、石綿による健康被害の特殊性にかんがみ、石綿による健康被害を受けた者およびその遺族に対し、医療費等を支給するための措置を講ずることにより、石綿による健康被害の迅速な救済を図ることを目的としている。
仕事中に石綿に接触した労働者だけでなく、労働者が持ち帰った作業着等に付いた石綿を吸い込んだ家族なども、石綿によって病気になることがある。石綿による健康被害は、仕事により発症したときは労災補償の対象となるが、それ以外の被害者を迅速に救済するために、本法が制定された。この法律によって、労災補償の対象とならない周辺住民などに対して医療費等の「救済給付」が支給されるとともに、労災補償を受けずに亡くなった労働者の遺族に対して「特別遺族給付金」が支給されることとなった。救済給付の手続きは、独立行政法人環境再生保全機構が、日本国内において石綿を吸引することにより指定疾病にかかった旨の認定を行い、認定を受けた者に対して救済給付を支給する。特別遺族給付金は、石綿を原因とする中皮腫や肺がん等により亡くなった労働者の遺族を対象とし、労災保険の遺族補償給付を受ける権利が時効(5年)によって消滅した場合に支給される。
法律制定当初は、石綿による健康被害で救済給付の対象となる指定疾病は、「中皮腫」および「気管支又は肺の悪性新生物」(肺癌(はいがん))であったが、2010年7月に本法施行令が改正され、指定疾病として「著しい呼吸機能障害を伴う石綿肺」と「著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚」が追加された。
[田中 謙]
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