アイスキネス(読み)あいすきねす(英語表記)Aischinēs

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アイスキネス」の意味・わかりやすい解説

アイスキネス(哲学者)
あいすきねす
Aischinēs

生没年不詳。紀元前5~前4世紀ごろのギリシア哲学者アテネの人。ソクラテスの徒で、「ソクラテス対話篇(へん)」を書いた。『ミルティアデス』『カリアス』『アクシオコス』『アスパシア』『アルキビアデス』『テラウゲス』『リノン』の7編があったらしいが、わずかの断片が伝わるのみである。プラトンによれば、アイスキネスは、ソクラテスの裁判にも、死にも立ち会っている。なお、弁論家のアイスキネス(親マケドニア派でデモステネスの論敵)、およびナポリのアイスキネス(前2世紀のアカデメイア派の哲学者)は別人である。

[田中享英 2015年1月20日]


アイスキネス(政治家、雄弁家)
あいすきねす
Aischinēs
(前390ころ―前330以後)

古代ギリシア、アテネの政治家、雄弁家。貧家に生まれ、悲劇役者や官吏として生活していたが、やがて政界に進出し、紀元前348年以後、アテネの親マケドニア派の代表者となった。前346年には、フィロクラテスとともにマケドニアへ赴き、現状維持を基調とした平和条約フィリッポス2世と結んだが、これをめぐって、のちに反マケドニア派のデモステネスとの間に激しい対立が起こった。デモステネス派との法廷闘争に関連する彼の演説が3編現存しており、この時代のギリシア政治史の貴重な史料となっている。結局彼は前330年にこの法廷闘争に敗れ、ロードス島に退き、雄弁術の教師として暮らした。

[篠崎三男]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アイスキネス」の意味・わかりやすい解説

アイスキネス
Aischinēs

[生]前389頃.アテネ
[没]前314頃.ロードス
ギリシアの雄弁家,政治家。アッチカ十大雄弁家の一人。前 348年マケドニア王フィリッポスとの和平の使節団に加わって以来,親マケドニア派の旗頭として,反対派のデモステネスとの間に激しい論戦を展開。前 340年の彼の演説を契機にデルフォイをめぐる聖戦が始り,その結果マケドニアの介入によって前 338年カイロニアの戦いにアテネ軍は大敗した。デモステネスの行賞に反対した彼は,前 330年デモステネスとの間に最後の大演説戦を交えた。しかし訴訟に敗れて追放され,ロードス島の弁論術の教師として生涯を終えた。演説3編が現存。

アイスキネス
Aischinēs of Athens

前5~4世紀頃のギリシアの哲学者,ソクラテスの熱心な信奉者。彼は師の裁判にも臨終にも立会い,その『ソクラテス的対話篇』は師の面影を最もよく伝えるものとされたが,アンチステネスアリスチッポスのようには学派をつくらなかった。

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