改訂新版 世界大百科事典 「アオスジアゲハ」の意味・わかりやすい解説
アオスジアゲハ
Graphium sarpedon
鱗翅目アゲハチョウ科の昆虫。無尾のアゲハで,翅は全体に黒く細長いが,中央に青い帯がある。国産のチョウとしては珍しく縦型の翅をもつ。開張約8.5cm。翅の明色部は生存中に紫外線によって帯黄緑色から青緑色に変わる。成虫は春はネギの花,夏,秋はヤブカラシの花に多く集まり吸みつする。羽化後まもない雄はしばしば路上の水たまりや湿地で吸水するが,海水も吸うことがある。動作は機敏で速く飛び,摂食,産卵の際も静止しない。幼虫はクスノキ科の常緑樹の葉を食べるが,絶えず若葉を生ずるクスノキが多い暖地では年数回,クスノキのない北部や内陸部ではふつう年2回発生する。雌は食樹の新芽付近に産卵し,幼虫は1~2齢時は葉裏に隠れ,後に葉表に移り一定の葉にすみつく。幼虫は鮮やかな緑色でさなぎとともに保護効果が高い。終齢(5齢)の幼虫は歩行時に体を前後に揺する独特の動き方をする。さなぎで越冬し,翌春新芽の出るころに羽化する。
執筆者:高倉 忠博
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報