改訂新版 世界大百科事典 「アオリイカ」の意味・わかりやすい解説
アオリイカ
oval squid
Sepioteuthis lessoniana
頭足綱ヤリイカ科のイカ。ひれが外套(がいとう)膜全長に及ぶところからよくコウイカ類とまちがわれるが,コウイカ類のように石灰質の貝殻をもたず,軟甲をもつヤリイカ類の1種。その全形からバショウイカ,あるいはクツイカの地方名があり,色素胞を収縮しているときは透明なところからミズイカ,シロイカ,あるいは産卵のため海藻に寄るところからモイカとも呼ばれる。外套長40cmを超える。外套膜の側縁全長にわたって,半円形のひれがあり,背側には断続する白線横縞があり,これは雌ではやや不明りょうである。腕の吸盤角質環には20~30の鈍歯があり,触腕のそれには鋭い歯がある。5~6月ごろ沿岸に寄り,海藻や沈木などに径約1mmの卵が7~8個入った寒天質の卵囊を多数産みつける。生食のほか,干しても食べるが,これは〈みずするめ〉とか〈もずるめ〉と称され高価。日本,西太平洋一帯,オーストラリア北部,ハワイ諸島にまで分布する。
→イカ[図]
執筆者:奥谷 喬司
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報