マンデリシタム(その他表記)Osip Emil'evich Mandel'shtam

改訂新版 世界大百科事典 「マンデリシタム」の意味・わかりやすい解説

マンデリシタム
Osip Emil'evich Mandel'shtam
生没年:1891-1938

ロシアソ連邦の詩人。ユダヤ人実業家の家に生まれ,ペテルブルグとドイツの大学で文学哲学を専攻した。1909年にV.I.イワーノフやアンネンスキーと知りあい,雑誌《アポロン》に近い詩人たちの仲間となった。10代の終りには革命運動にも参加したが,まもなく政治に対する関心を失って,ひたすら詩作にうちこみ,ボードレールとベルレーヌに傾倒した。1909-11年にかけて最初の詩が書かれているが,これらは後に詩人としての地位を確立した詩集《石》(1913,第2版1916)に収められた。その詩風はきわめて繊細で芸術的な香気にあふれ,フランスの象徴主義の影響がみられる。このほか,自伝的散文《時のざわめき》(1925),革命前のインテリゲンチャの精神的危機を描いた中編《エジプト切手》(1928),生前最後の発表作品となった《アルメニアの旅》(1933)を書いた。しかし,1934年にスターリンへのあてこすりの詩によって逮捕され,いったんは釈放されたが,再逮捕ののち収容所で死亡し,〈雪どけ〉後に名誉回復された。

 その後ソ連でもわずかながら詩集が再刊されているが,今なお全面的な形での再評価は行われず,主たる研究は西ヨーロッパで行われている。〈雪どけ〉後発表された《ダンテについての会話》(1935)は詩に対する詩人の立場を明らかにしている優れたエッセーである。またナジェージダ未亡人の書いた回想録(1970)は,ソ連では公刊できなかったが,西ヨーロッパでは高く評価され,この不世出の詩人の再評価に大きく貢献した。ペレストロイカ以降,一種のマンデリシタム・ブームといわれるほどその評価は高くなっている。
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百科事典マイペディア 「マンデリシタム」の意味・わかりやすい解説

マンデリシタム

ロシア(ソ連)の詩人。象徴主義の美学に反発し,具体的で明晰な美を追求するアクメイズムの詩人として出発する。スターリン時代に逮捕され,収容所で死去。ユダヤ系ロシア人で,世界文化に対して開かれた感性を持ち,その詩は彫琢された形式美と音楽性,そして哲学的抒情で際立っており,パウル・ツェラーン等に強い影響を与えた。詩集《石》(1913年),《トリスチア》(1922年)の他,実験的な小説《エジプトのスタンプ》(1928年)や自伝的散文《時のざわめき》(1925年)などがある。

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