アセノスフェア(読み)あせのすふぇあ(英語表記)asthenosphere

翻訳|asthenosphere

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アセノスフェア」の意味・わかりやすい解説

アセノスフェア
あせのすふぇあ
asthenosphere

地球表面は厚さが100キロメートル程度の硬いリソスフェア岩石圏)で覆われているが、このすぐ下のより柔らかい層のことをアセノスフェアという。20世紀の初めにアメリカの地質学者バレルJoseph Barrell(1869―1919)によって名づけられたもので、「軟弱圏」というような意味をもつ。もともとはアイソスタシー研究から生まれた概念であるが、現在では、上部マントルにある地震波低速度層がほぼこれに対応するとされている。海洋地域や弧状列島の下ではとくに低速度層がよく発達しており、少なくともこうした地域のアセノスフェア内では、上部マントル物質が部分溶融の状態である可能性がある。

[吉井敏尅]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アセノスフェア」の意味・わかりやすい解説

アセノスフェア
asthenosphere

地球内部の上部マントルの領域にある,高温で流動しやすい層。岩流圏ともいう。地殻と最上部マントルからなる硬い層リソスフェアプレート)を載せて,地表から約 100~660kmの深さに広がる。地球深部からの熱がアセノスフェアの流動性を高め,プレートの下面を潤滑にして移動しやすくしていると考えられている。アセノスフェア内で発生したマントル物質の対流は,地下のマグマ火山の火口付近に押し上げる力となるほか,プレート発散境界(拡大境界)にあたる中央海嶺では新しい海洋地殻をつくりだす。プレートテクトニクスの理論によれば,アセノスフェアはプレートの沈み込み帯で引きずりおろされた,古くて密度の大きいリソスフェアの一部が貯蔵されている場所と考えられている。アセノスフェアの存在は上部マントルに地震波の速度が遅くなる低速度層の発見により明らかになった。

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