アムハラ語(読み)あむはらご(英語表記)Amharic

翻訳|Amharic

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アムハラ語」の意味・わかりやすい解説

アムハラ語
あむはらご
Amharic

エチオピアで使用される言語の一つ。現在エチオピアでは70以上といわれる多数の言語が話されているが、そのなかで最大の母語人口(約1500万人)をもつ。系統的にはセム語族に属する。古典エチオピア語(ゲエズ語)にとってかわって、13世紀以降王国の宮廷語として用いられるようになったが、書きことばとしての地位を確立し、独自の文学を発展させたのは19世紀末からである。文字はゲエズ語に使われた文字に改変を加えたもので、日本のかなと同様の音節文字で、左から右に書く。元来のエチオピア中部高原地帯から、共通語として漸次全土に広まっている。またきわめて低かった識字率も、近年の強力な識字運動に伴い向上をみている。

[柘植洋一]

特徴

27子音と7母音をもつが、喉頭(こうとう)の緊張を伴い発音される一群の子音(放出音)が特徴である。同じセム系でも北部のティグレ語やティグリニア語と比べて、土着のクシ語の影響が著しく、セム語固有の豊富な喉音(こうおん)は失っており、語彙(ごい)もクシ語からの借用語が多い。また統語面でも、セム語本来のものと異なり、修飾語被修飾語に先行するとか、基本的語順主語目的語動詞であるといった、日本語とよく似た特徴をもつ。動詞の活用組織は比較的本来のセム語的特徴をとどめている。

[柘植洋一]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アムハラ語」の意味・わかりやすい解説

アムハラ語
アムハラご
Amharic language

エチオピアの中央部および南部高地で話される言語で,エチオピアの実務用言語。セム語族に属し,いわゆるエチオピア諸語の一つ。クシ語の影響を強く受け,古来のセム語の特徴を失っている点が多い。エチオピア祖語と比較してみると,音韻面では,喉頭音消失,歯音と歯擦音口蓋化,形態面では,女性の印-tと対格の印-aの消失,複数の印-očと動詞の派生語幹の発達が目立つ。構文面,語彙面でもクシ語の影響がみられる。最古の文献は 14世紀。文字は南セム文字の系統をひくエチオピア音節文字に補助符号をつけたものを用いている。

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