あらくれ

改訂新版 世界大百科事典 「あらくれ」の意味・わかりやすい解説

あらくれ

徳田秋声長編小説。1915年(大正4)《読売新聞》に連載,同年,新潮社より単行本として刊行。幼いときに東京近郊で製紙業をいとなむ農家の養女となったお島は,養家のすすめる婿をきらって家を飛びだし,缶詰屋と結婚したり,山国の旅館の主人と関係したりするが,やがて被服厰の下請けをしている洋服屋と世帯をもつ。共働きの生活にはじめて女としての生きがいを自覚したものの,結局,お島は夫の凡庸さに愛想を尽かし,職人の一人と通じて〈独立〉しようと決心する。先行作《足迹(あしあと)》《爛(ただれ)》と同じく,流転する女の半生を描いているが,野性的で自我のつよい女主人公を職業的自立と結びつけたところに新味がある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「あらくれ」の意味・わかりやすい解説

あらくれ

徳田秋声(しゅうせい)の長編小説。1915年(大正4)1月12日~7月24日『読売新聞』に掲載。同年9月新潮社刊。気性の強いお島は継母とあわず、7歳で養女に出され、18歳で養家から家出し、その翌年後妻に入るが、そこでも「天性の反抗心」で飛び出し、山の温泉宿で女中になってその主人と関係し、東京に戻って洋服商小野田と同棲男勝りの働きをみせるが亭主に飽き足らず、使用人の若い職人に心を移すという筋(すじ)。「現代の極(ご)く神経の荒っぽい人情を解しない」行動的な女を描くことが秋声の意図だった。それは、秋声の優れた女性描写によってみごとに客観化され、自然主義系の傑作となったが、夏目漱石(そうせき)は「フィロソフィがない」と批判した。

[和田謹吾]

『『あらくれ』(新潮文庫)』『吉田精一著『花袋・秋声』(『吉田精一著作集 8』1980・桜楓社)』

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デジタル大辞泉プラス 「あらくれ」の解説

あらくれ

1957年公開の日本映画。監督:成瀬巳喜男、原作:徳田秋声、脚色:水木洋子。出演:高峰秀子、上原謙、森雅之、加東大介、三浦光子ほか。第12回毎日映画コンクール女優主演賞(高峰秀子)受賞。

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