アラトス(読み)あらとす(英語表記)Aratos

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アラトス」の意味・わかりやすい解説

アラトス[シキュオン]
Aratos of Sikyōn

[生]前271
[没]前213
古代ギリシアの政治家。出身都市シキュオンを僭主から解放し,マケドニアに対するアカイア連盟に加盟させた。連盟将軍としてマケドニアの拠点コリント城塞を落し,アテネなどを解放,民主政都市を広め,スパルタなどを除くペロポネソスの全都市を連盟に入れた。前 222年マケドニア王アンチゴノス3世援助でスパルタを破り,同盟市戦争ではアンチゴノスの後継者フィリッポス5世に加担したが,のちその反ローマ政策に反対。フィリッポスにより毒殺されたとされるが,おそらく結核死が真相

アラトス
Aratos

[生]前315頃.キリキア,ソロイ
[没]前240/前239. マケドニア
ギリシアの詩人。ヘレニズム時代の教訓詩詩人の代表者。アテネでカリマコスと知合い,前 276年マケドニア王アンチゴノスの宮廷に招かれ,王の結婚を賛歌によって祝した。のちシリアのアンチオコスの宮廷を訪れたが,晩年マケドニアに戻った。主著『現象』 Phainomenaは天体の位置と運動,天候の予兆について歌った 1154行の叙事詩で,天体現象の科学的記述としてではなく,美しい星の伝説集として文学的価値が認められる。発表と同時に有名になり,キケロをはじめ多くのローマ人によってラテン語に翻訳された。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アラトス」の意味・わかりやすい解説

アラトス(政治家、将軍)
あらとす
Aratos
(前271―前213)

古代ギリシアの政治家、将軍。シキオン出身。紀元前264年に父クレイニアスが党争で殺害されてアルゴス亡命。前251年には祖国を独裁者の手から奪還して、反マケドニアのアカイア同盟に加盟させ、エジプトプトレマイオス3世の財政援助を取り付けた。前245年以降隔年にアカイア同盟の将軍職につき同盟の拡大に努めたが、プトレマイオスの支持がスパルタに移り、前227年スパルタのクレオメネス3世敗北を喫するに及んでアラトスはマケドニア陣営にくみした。アイトリア同盟に対する同盟市戦争(前220~前217)ではフィリッポス5世の軍事顧問を務めたが、前214年には同王の対ローマ戦争に反対した。

[馬場恵二]


アラトス(詩人)
あらとす
Aratos
(前315ころ―前240/239)

古代ギリシアの詩人。小アジアのキリキアの出身。アテネ(アテナイ)に遊学してゼノンにストア哲学を学び、マケドニアのアンティゴノス・ゴナタスの宮廷に招かれた。現存する作品は、もっとも有名な『星辰譜(せいしんふ)』Phainomenaである。これは「天文詩」とよぶべき叙事詩で、星座と天体の運行を歌い、結尾の400行ほどで天候とその予知方法に及ぶ全1154行の作品。ストア派の教義が作品全体に浸透し、神話や伝説が効果的に用いられて、エウドクソスの天文学が高度な詩へ昇華されている。ほかの多くの作品はすべて伝わらない。

[伊藤照夫]

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