カリマコス(読み)かりまこす(英語表記)Kallimachos

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カリマコス」の意味・わかりやすい解説

カリマコス
Kallimachos

[生]前310頃.キュレネ
[没]前240頃
ギリシア詩人,文献学者。アレクサンドリア時代の典型的な学者詩人で,著書は 800巻。図書館のカタログ編者として 120巻の文献史『目録』 Pinakesを編纂,これはギリシア最初の科学的文学史。長大な詩を大悪として小詩を主張,ロドスアポロニオスと論争した。完全な形で現存するのは賛歌 6編とエピグラム 63編。代表作はエレゲイアによる『アイティア』 Aitia (4巻) 。ほかにイアンボス,弔詩,エピュリオン『ヘカレ』 Hekalē,アポロニオスをからかった『イビス』 Ibis,ローマのカツルスの翻案によって知られる頌詩『ベレニケの髪』 Coma Berenicesなど。彼の文芸理論は共和政末期から帝政初期のローマの詩人たちによって全面的に受入れられ,ラテン黄金文学の血肉と化した。

カリマコス
Kallimachos

[生]?
[没]前490
古代ギリシア,アテネポレマルコス (軍事指揮官) 。前 490年マラトンの戦い総司令官をつとめ,最終段階で戦死。彼の戦功ミルチアデスの陰に隠れているが,アテネのストア・ポイキレーの壁画に神々と英雄の間に彼の容姿が描かれており,また2つの短詩によって認められている。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「カリマコス」の意味・わかりやすい解説

カリマコス
かりまこす
Kallimachos
(前310ころ―?)

古代ギリシアの詩人、学者。アフリカのキレネの出身。アレクサンドリアの図書館の司書となり、プトレマイオス2世の恩顧を受けた。学者としては、ギリシアのあらゆる学問分野における優れた業績を整理分類し、これを120巻からなる目録にまとめ、劇詩人などの研究や数種類の辞典を著した。彼の詩は、賛歌、エレゲイア詩、イアンボス詩、小叙事詩、短詩(エピグラム)など広い領域にわたっていた。写本に伝わるのは賛歌と短詩のみであるが、そのほかに多数のパピルス断片が発見されている。

 代表作は各地の祭礼習俗縁起を歌った『アイティア』4巻(断片残存)。そこには技巧的な構成や変化に富む詩句、神話・歴史・地誌などの学問的考証がみられる。彼は磨かれた小品を重んじ、長大な叙事詩を痛烈に批判した。また文学理論をめぐり弟子のアポロニオスと論争したといわれる。ローマの詩人にも大きな影響を与えた。

[岡 道男]

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