合成樹脂(プラスチック)を大別したときの名称の一つ。熱可塑性樹脂に対する語。熱硬化性とは、ある種の単量体(モノマー)が加熱によって立体的に硬化する性質をいう。熱硬化性樹脂は、できあがるとどんな溶媒にも溶けないし、また加熱しても溶融しない。さらに強く加熱すると熱分解してしまうものである。それは、できあがった高分子の構造が立体的(三次元的)に網状化しているからである。
低分子のときの手が2本ある単量体、たとえばスチレンを考えると、動きやすい二重結合の一つのπ(パイ)結合が開いてラジカルになるが、それは手が2本である。一つの手をAと示せば、2本のものはA―Aであり、手が2本のもの(単量体)を連結していけば線状の重合体(ポリマー)になる。また、テレフタル酸とエチレングリコールとを反応させると、どちらも反応しうる手が2本ずつあるから、やはり線状のポリマーになる。
いま、一つの物質の手が2本であり、もう一つのものの手が3本のときは分子は立体的に成長していく。このような構造は平面構造にしか書き表せないが、紙面から垂直の方向にも成長していく。この成長の途中で反応系の粘度があがり、不溶化してくる。この不溶化の点をゲル化点とよんでいる。ゲル化点を過ぎると分子内反応がおこり、網状構造を形成する。有効な網状構造の形成によって熱硬化性樹脂の不溶不融化と、機械的強度の増加が伴ってくる。
熱硬化性樹脂の代表的な樹脂として、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル(不飽和ポリエステル)などがある。
[垣内 弘]
『渡辺啓著『文科系のための現代の化学』(1988・日新出版)』▽『フレッド・W・ビルマイヤー, Jr.著、田島守隆・小川俊夫訳『続・高分子科学教科書 材料・加工・応用編』(1989・東京電機大学出版局)』▽『伊保内賢編著『エンジニアリングプラスチック活用ノート――高性能素材選択の指針』(1990・工業調査会)』▽『レイモンド・B・シーモア、チャールズ・E・キャラハー著、西敏夫訳『巨大分子――生活のなかの高分子材料』(1991・マグロウヒル出版)』▽『R. J. Ehrig編著、プラスチックリサイクリング研究会訳『プラスチックリサイクリング――回収から再生まで』(1993・工業調査会)』▽『森本孝克著『プラスチックの使いこなし術――材料選定のキーポイント網羅』(1997・工業調査会)』▽『日本化学会編、今井淑夫・岩田薫著『高分子構造材料の化学』(1998・朝倉書店)』▽『旭化成アミダス・「プラスチックス」編集部編『プラスチック・データブック』(1999・工業調査会)』▽『大柳康監修『エンジニアリングプラスチックの成形・加工技術』(2001・シーエムシー)』
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合成樹脂をその化学構造に基づいて大別したときの一つ。熱硬化性,すなわち一度加熱して硬化させるともはや軟化せず,どんな溶媒にも溶けなくなる特性をもつ樹脂の総称で,熱可塑性樹脂に対する。一般に成形は1回しか行えない。すなわち,分子量1000以下の低分子量のものをマトリックスに含浸させるか型にはめ,それを加熱して高分子にすることによって成形品を得る。低分子量のプリポリマーは三つ以上の反応点をもち,それが加熱によって三次元の網状構造を有する不溶不融の高分子になる。熱可塑性樹脂に比べ,耐熱性,耐薬品性にすぐれているが,硬化が化学反応であるため成形速度がおそく,多量生産に適していない。また熱可塑性樹脂に比べて構造的にバラエティに富む性能を得ることは難しく,特殊な用途に限られつつある。フェノール樹脂,メラミン樹脂,不飽和ポリエステル樹脂,エポキシ樹脂,ケイ素樹脂,ポリウレタン樹脂などがこれに属する。
執筆者:森川 正信
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加熱することにより硬化反応が進行し,不溶・不融になる性質をもっている樹脂.フェノール樹脂,尿素樹脂,メラミン樹脂,アルキド樹脂など多官能性の単量体の縮合物とみなされる樹脂がこれに属する.これらの樹脂を成形するには,付加縮合反応を初期の段階にとどめて得られるプレポリマーを,型のなかで加熱して形を与えるとともに,さらに重合反応を進行させて行う.硬化反応によって三次元網目状構造をもつ樹脂になり,剛性,耐熱性,耐溶剤性,形態安定性などがすぐれたものになる.一方,成形のためには,プレポリマーの成形性,硬化温度・時間など,管理されなければならない要因が多い.
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[分類]
合成樹脂の種類は多いが,通常は成形性の面から二つに分けられる。一つは熱硬化性樹脂thermosetting resinであり,他は熱可塑性樹脂thermoplastic resinである。熱硬化性樹脂としては,ホルムアルデヒドで硬化するフェノール樹脂,メラミン樹脂などと,重合などによって硬化する不飽和ポリエステル樹脂,エポキシ樹脂,ポリウレタン樹脂,シリコーン樹脂などがある。…
…一方,ゴムとしての性質を示す高分子は,分子の形態の変化が起こりやすく,分子間の相互作用が弱いもので,このような分子の間のところどころに結合(橋架け)をつくっておくと,大きい弾性を示すことになる。プラスチック(合成樹脂)は熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂に大別される。前者となる高分子は,常温では固体であるが加熱すると液体となるもので,この液体を適当な形にして冷却すると固化して成形品が得られる。…
※「熱硬化性樹脂」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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