日本大百科全書(ニッポニカ) 「アーチ橋」の意味・わかりやすい解説
アーチ橋
あーちきょう
arch bridge
構造形式による橋の分類の一つで、主要部分がアーチ状の橋。アーチはおもに圧縮力に抵抗するが、最近では曲げや剪断(せんだん)にも抵抗できるように設計したものも多い。材料には鋼、コンクリートが用いられる。古くはローマの水道橋などのように石材を用いた。
アーチはリブrib(橋軸に平行で通常鉛直面内にある独立したアーチリング)の有無によりリブアーチとスパンドレル・ブレースドアーチspandrel braced archに分けられる。リブが充実構造のものをソリッドリブ・アーチsolid rib archといい、トラス形式のものをブレースドリブアーチbraced rib archという。なお、リブにパイプを用いたパイプアーチpipe archや、石材などでせり持ちにしたブーソアアーチvoussoir archもある。アーチはヒンジhinge(蝶番(ちょうつがい))の数により、3ヒンジおよび2ヒンジアーチに分けられる。ヒンジをもたないものを固定アーチという。また、アーチの両支点間をつなぎ材で連結したものをタイドアーチtied archという。なお、つなぎ材として曲げに抵抗するように補剛桁(ほごうげた)を用いたものをローゼLohse橋、補剛桁の剛性を大きくしアーチは曲げに抵抗しえない構造としたものをランガーLanger橋という。これらをまとめて補剛アーチ橋という。アーチ橋の歴史は古く、ローマ時代の石造アーチ橋で現存するものも多い。日本にも長崎の眼鏡橋(めがねばし)(1634年架設、1982年の豪雨で一部破損)、岩国の錦帯橋(きんたいきょう)(1673年架設)など数多くのアーチ橋がある。世界最大の鋼アーチ橋はアメリカ、ウェスト・バージニア州のニューリバーゴージ橋(1977年架設。支間518メートル)、日本最大の鋼アーチ橋は愛媛県の大三島橋(おおみしまばし)(1979年架設。支間297メートル)である。
[小林昭一]