出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報
半円形が二つ並んだ石造りの橋。長崎県を中心に九州各地につくられたが、とくに有名なのは(1)長崎市と(2)諫早市(いさはやし)にある橋。ともに眼鏡橋とよばれている。
(1)1634年(寛永11)架橋された日本最古の石橋で、1960年(昭和35)国の重要文化財に指定された。架橋の由来は次のとおり。町の中央を流れる中島川(なかしまがわ)の氾濫(はんらん)によって従来の脚のある木造の橋は流失し、街は分断され両岸の住民は不便に苦しんでいた。1632年(寛永9)中国から渡来した僧如定(にょじょう)は、その窮状を見かね、石材によるアーチ状の虹(にじ)の橋がもっとも強固と考え、半円(お互いに力を支え合っている拱環石(こうかんせき)の形)を二連(にれん)にした石橋を建設した。満潮時の橋の姿が眼鏡にみえるので眼鏡橋とよばれた。以来、中島川には20(現存14)に達する石橋がつくられたが、水害によって流失ないし架け替えられたものが多い。しかし、眼鏡橋は健在であった。1982年7月22日の大豪雨によって一部を破壊され、その存廃が論議の的となったが、存続する方向で復旧された。
(2)諫早市の眼鏡橋は、1839年(天保10)本明川(ほんみょうがわ)に架橋され、1957年(昭和32)の大水害に際し、堅固なため流失せず、流木などをせき止め、まさにダムの役割を果たしたため、市街地の被害を増大せしめたものとして撤去され、諫早公園内に原型のまま保存されている。1958年に国の重要文化財に指定。
[石井泰義]
『山口祐造著『九州の石橋をたづねて』前・中・後篇(1975・昭和堂)』
出典 日外アソシエーツ「事典 日本の地域遺産」事典 日本の地域遺産について 情報
出典 日外アソシエーツ「事典・日本の観光資源」事典・日本の観光資源について 情報
…有明海に注ぐ本明(ほんみよう)川の三角州に発達した市街地は,1957年の集中豪雨による大水害で泥土と化したが,今は復興している。大水害に耐えた眼鏡橋(1839年に架けられた石橋)は,河川改修のため諫早公園に移築復元され,1958年に国の重要文化財に指定された。諫早公園はもとの領主諫早家の居城,高城(たかしろ)の跡を公園にしたもので,ツツジの名所である。…
…戦国時代から桃山時代にかけては城の石垣造営にその技術が重用され,穴生(あのう)(滋賀県)の石工は特に名高い。このほか眼鏡橋(長崎市,1634),通潤橋(熊本県上益城郡,1854)などの石造橋,閑谷(しずたに)学校石塀(備前市,1701)などの石塀,日光東照宮石鳥居(1618)や久能山東照宮廟所宝塔(静岡市,1617)などの宗教建築物,および各地に残る石畳道などはいずれも石工の高い技術をよく示している。江戸幕府の建設担当役所である作事方(さくじかた)では,大棟梁のもとに鍛冶・錺(かざり)などとともに石方を配し,その指揮者は石方棟梁と呼ばれ,建物の基礎,竈(かまど)やこたつの石などの作製を担当した。…
…とくに著名な古代ローマ時代の石造アーチ橋は力学の理にかなったまことに堅牢なつくりで,現在でもヨーロッパ各地にそのいくつかが残っている。その後この技術は中世ヨーロッパに継承されたほか,早くから中国に伝えられ,やがて日本にも伝来して,長崎の眼鏡橋(1634完成)をはじめ多くの石造アーチ橋が九州各地につくられた。琉球にはそれ以前にも中国風の石造アーチ橋があったという。…
…また,中国福建省出身の人たちが建立した唐寺崇福(そうふく)寺には,国宝の大雄宝殿と第一峰門がある。1634年(寛永11)興福寺住職の如定(によじよう)禅師が中島川に架けた眼鏡(めがね)橋(重要文化財)は,日本最古の石橋であるが,1982年7月に長崎を襲った集中豪雨により一部破損した。ほかに国の史跡として江戸時代オランダ人居留地であった出島のオランダ商館跡,日本の青年たちに医学を講じたシーボルト宅跡がある。…
…もっとも古い記録は,当時独立国であった琉球に1451年建設された長虹堤に含まれる大小七つのアーチ橋である。九州では明の帰化僧如定による長崎の眼鏡橋(1634)を最初として多数の石造アーチ橋がつくられ,なかでも諫早の眼鏡橋,鹿児島の甲突(こうつき)五橋,熊本の通潤橋が名高いが,熊本以南のものは肥後の石工たちが独自のくふうで発展させた秘伝によるという。 日本近代橋梁の歩みは明治の文明開化とともに始まった。…
※「眼鏡橋」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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