( 1 )「は‐し」の項に挙げた「万葉」例のような「はし」の語頭が濁音化したものと思われる。ただし、「ばし」が目的語を受ける場合が多いため、目的格を表わす「をば」の意の「ば」(現代も方言に残る)に強意の「し」が付いたものとする説もある。
( 2 )中古の古例ともいわれる「宇津保‐祭の使」の「庄物・贄はしたいまつるおんにこそあらめ」や「篁物語」の「文かよはしにはししたれど」などは清濁のきめてがなく、また前者は本文的に、後者は逆接条件句に用いられている点に問題がある。「ばし」は疑問・推量・禁止の文に用いられるのが普通だからである。
( 3 )中世にはいると用例が増加し、平曲でも「平家正節‐六」の「御心にばし違ひまゐらすな」のように濁るところから、中世初期には成立したと考えられる。
( 4 )「ばし」を係助詞とする説もあるが、「却癈忘記‐上」の「二三時のをこなひはしをむねとして、さてそのひまひまにしつべくは」など、格助詞の前にくる例もあるから副助詞とする。
( 5 )この語は鎌倉・室町両期を中心に使われ、当初は会話における俗語的なものであったと思われるが「ロドリゲス日本大文典」に「Baxi(バシ)〈略〉又ある場合には多分といふ意を表わし、他の場合には単に品位を加へるだけである」(土井忠生訳)とあり、時代が下るに従って強調の意が弱まり、上品な語としても意識されたらしい。「日葡辞書」では日常語の接辞とする。
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