改訂新版 世界大百科事典 「アーンドラプラデーシュ」の意味・わかりやすい解説
アーンドラ・プラデーシュ[州]
Āndhra Pradesh
インドの州。インド半島中部にあり,ベンガル湾に面する。面積27万7000km2,人口7621万(2001)。州都はハイデラバード。1953年に英領時代の旧マドラス州から分離したアーンドラ州に,56年に旧ハイデラバード州の東部を加え,60年にドラビダ語系に属するテルグ語を地方公用語とする言語州として,現在のように再編・成立した。地形は,狭長な海岸平野,東ガーツ山脈の山塊群,デカン高原の楯状地の順に東から西に配列。海岸平野の西境はほぼ100mの等高線で,中央部にゴーダーバリー川とクリシュナー(キストナ)川の大デルタを抱く。そこは年降水量1000mm以上と多いうえに,河川灌漑の発達したインド有数の農業地帯であり,〈南インドの穀倉〉とよばれる。米,サトウキビの産が多い。またグントゥール周辺はインド最大のタバコ産地である。しかしサイクロンに見舞われることも多い。
東ガーツ山脈は標高300~1350mで,ナッラマラ山脈をはじめ並走する諸山脈群からなる。前記の両河川などが刻む峡谷により分断されている。人口密度は粗でチェンチュ族などの部族民が住む。その背後にはデカン高原が,北部では約300km,南部では150kmの幅で西の州境部まで広がっている。そこは標高300~600mのゆるやかに起伏する準平原状高原で,所々に花コウ岩の巨岩を戴くコンダkondaとよばれる残丘がそびえる。中央部は花コウ岩の風化したやせた赤色土が広がるが,北端部や諸河川の谷底平野にはデカン・トラップDeccan Trapの黒色土が分布する。降水量は北部では800mm以上であるが,南西部では600mm以下となり,半乾燥地帯に属する。河川と溜池で灌漑される谷底平野の米を除くと,モロコシなどの雑穀とラッカセイなどが天水をもとに栽培される。
ゴーダーバリー,クリシュナー河口デルタはアーンドラ族の故地であり,南インドの歴史時代の幕あけとなったサータバーハナ朝における重要地域であった。7世紀からデカン高原に栄えた東チャールキヤ朝時代に,テルグ文字をはじめ現在のテルグ文化の基礎がつくられた。以後,現州都ハイデラバード周辺地域に根拠をおく諸王朝が興亡し,英領インドとなってからもハイデラバード藩王国として存続した。1947年の独立に際して,イスラム教徒のニザーム(藩王)は同藩王国の独自独立を主張したが,住民の大多数(85%)がヒンドゥー教徒であることを理由に,48年にインド共和国が軍事占領し,同国に編入した。
独立後,ナーガールジュナ・サーガル・ダム(石造ダムで130万haを灌漑予定)などの開発計画を進める一方,臨海都市ビシャーカパトナムには石油精製,造船などの近代工業が立地している。しかし工業の主体は紡織,精糖,製油などの軽工業にある。鉱産資源では石炭の産が多く,南端部にはインド唯一のアスベストの産出地がある。
→アーンドラ美術
執筆者:応地 利明
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報