天水(読み)テンスイ

デジタル大辞泉 「天水」の意味・読み・例文・類語

てん‐すい【天水】

空と水。水天。
天から降る水。雨水。
天水桶」の略。
[類語]ウオーター生水浄水蒸留水水道水上水井戸水地下水雨水うすい雨水あまみず降水冷や水冷水氷水温水呼び水誘い水

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精選版 日本国語大辞典 「天水」の意味・読み・例文・類語

あま‐つ‐みず‥みづ【天水】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙 天上の水。天にあるという神聖な水。また、天から降る水、すなわち雨水。
    1. [初出の実例]「雨降らず 日の重なれば〈略〉緑児の 乳乞ふがごとく 安麻都美豆(アマツミヅ) 仰ぎてそ待つ」(出典:万葉集(8C後)一八・四一二二)
  2. [ 2 ] ( 日照り続きの時、空を仰いで雨の降るのを待つというところから ) 「仰ぎて待つ」にかかる。
    1. [初出の実例]「四方(よも)の人の 大船の 思ひ憑(たの)みて 天水(あまつみづ) 仰ぎて待つに」(出典:万葉集(8C後)二・一六七)

てん‐すい【天水】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 空と水。水天。
    1. [初出の実例]「但見天水之碧色、豈視山谷之白霧」(出典:性霊集‐五(835頃)為大使与福州観察使書)
  3. 天から降った水。雨水。
    1. [初出の実例]「座の前に鉢を置きて、天水をまちてうけて飲む」(出典:続古事談(1219)四)
  4. てんすいおけ(天水桶)」の略。
    1. [初出の実例]「屋ねにもなくや蛙鶯 天水に枝をさしたる梅花」(出典:俳諧・犬子集(1633)七)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「天水」の意味・わかりやすい解説

天水(中国)
てんすい / ティエンショイ

中国、甘粛(かんしゅく)省南東部の地級市。2市轄区、清水(せいすい)県など4県と張家川(ちょうかせん)回族自治県を管轄する(2016年時点)。常住人口331万1700(2015)。この地域は流域としては渭河(いが)の上流になるが、東を六盤(りくばん)、隴山(ろうざん)両山脈によってくぎられて盆地(天水盆地)となり、関中(かんちゅう)を西からうかがう位置にあると同時に、陝西(せんせい)省から甘粛、四川(しせん)両省へ向かう際の入口にあたる。秦(しん)はここを基盤として東方へ進出し、天下を統一すると隴西(ろうせい)郡を置いた。漢以後も天水郡、秦州などが置かれ、西北地区の死命を制する地として重要視された。1913年天水県となり、中華人民共和国成立後、市街地の部分を市とした。

 渭河の灌漑(かんがい)を利用して農業が発達し、小麦や綿花の生産が盛ん。また陝西、甘粛、四川3省への交通が交わる地点にあたり、伝統的に商業が発達している。現在は隴海(ろうかい)線が通るほか、軍民共用の天水空港がある。手工芸では彫漆が著名であり、電子部品、機械、毛織物などの工業もおこっている。文化財としては、南北朝時代から開削された麦積山石窟(ばくせきざんせっくつ)が有名で、2014年には「シルク・ロード:長安‐天山(てんざん)回廊の交易路網」の構成資産として、世界遺産文化遺産に登録されている(世界文化遺産)。

[秋山元秀・編集部 2017年6月20日]


天水(熊本県)
てんすい

熊本県北部、玉名(たまな)郡にあった旧町名(天水町(まち))。現在は玉名市の南東端部を占める。旧天水町は1954年(昭和29)小天(おあま)、玉水(たまみず)の2村が合併して新たに天水村を設置、1960年町制施行。地名は両村の住民からの公募によった。2005年(平成17)玉名市に合併。旧町域は、開析の進んだ更新世(洪積世)前期火山岩の金峰(きんぽう)火山地からなる東半域と、その東半域の各斜面に発達した諸小河川の運んだ土砂の堆積(たいせき)地と、その地先に造成された干拓地とからなる西半域とに大別される。この対照は土地利用面でも、東半域のミカン、オレンジ園、西半域の水田、メロン、イチゴ畑となって現れている。とくにミカンは、1782年(天明2)小天(おあま)村に導入された温州ミカン(うんしゅうみかん)が品種改良を繰り返しながら、ここより県下各地に普及していったもので、「ミカンの里」としての呼称は単なる観光標語ではなく、その歴史に基づいたものである。貝塚・古墳、火の神祭りで知られる少彦名命神社(すくなひこなのみことじんじゃ)、対明(みん)貿易をしのばせる唐人川(とうじんがわ)筋、明国人林均吾(きんご)の墓、旧干拓堤防の石塘(いしども)、また小天温泉には夏目漱石(そうせき)の名作『草枕(くさまくら)』ゆかり漱石館などがあり、古代から近代までの各時代の文化がうかがえる。

[山口守人]

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改訂新版 世界大百科事典 「天水」の意味・わかりやすい解説

天水 (てんすい)

雨水と等しい意味に用いられることがある。天水は,自然に賦存する水と人間が接触する最も原初的な水利形態である。島嶼部,例えば南西諸島では,多くの家で屋根の雨水を貯水槽に受けて,天水を飲用としている地域がある。それは飲用水として使える河川や池が少ないだけでなく,井戸水も水質・水量の両面からみて水事情が悪いからである。なお,わら屋根の場合は,雨水を集めにくく,木の幹を伝わる雨水を集めている所がある。

 天水の用例については,水稲を主とする東洋の灌漑農業に対して,小麦を主とするヨーロッパの天水農業と言ったりする。また,灌漑農業地域でも,自然の降雨のみによって水稲を栽培している水田のことを天水田と呼んでいる。近年,土地改良事業が進展しているので,天水田はよほどの低湿地か山間傾斜地の水田でないとみられず,水稲の収量も多くはない。
執筆者:


天水 (てんすい)
Tiān shuǐ

中国,甘粛省南東部,渭河上流の一中心都市。人口115万(2000)。秦州の俗称でも知られる。古く西域と中原地方を結ぶ交通および中原の防衛要地として重要であった。今日も隴海(ろうかい)鉄道(連雲港~蘭州)沿線にあり,また蘭州,西安,四川地方への公路が走っている。古くからの農産物集散地であるが,解放後,付近での鉄鉱石,石炭の開発により,紡織などの軽工業のほかに鉄鋼・機械工業も発展してきた。南東約50kmの麦積山(麦積山石窟)には,多数の仏像をもつ大小約200の石窟がある。
執筆者:


天水(熊本) (てんすい)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「天水」の意味・わかりやすい解説

天水
てんすい

熊本県北西部,玉名市南東部の旧町域。菊池平野南東部にある。 1954年小天村と玉水村が合体して天水村となり,1960年町制。 2005年玉名市,岱明町,横島町と合体して玉名市となった。主産業はウンシュウミカンの栽培で,小天は古くからのミカン産地。南部に夏目漱石の『草枕』ゆかりの小天温泉がある。一帯は金峰山県立自然公園に属する。

天水
てんすい
meteoric water

地球上の大気中に含まれる水。地表に達する場合には降雨,降雪などの形をとる。大気中に含まれている量は,地表の単位表面積に対して約 25mmと考えられる。

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百科事典マイペディア 「天水」の意味・わかりやすい解説

天水[町]【てんすい】

熊本県北西部,玉名郡の旧町。西部は菊池平野南端部にあたる干拓地で水田が開け,東部は県有数のミカン産地。小天(おあま)温泉がある。2005年10月玉名郡横島町,岱明町と玉名市へ編入。21.48km2。7189人(2003)。

天水【てんすい】

中国,甘粛省南東部の都市。甘粛・四川・陝西3省間の道路の連絡点で,隴海(ろうかい)鉄路(連雲港〜蘭州)に沿う商業の中心地。1952年,蘭新鉄路(蘭州〜ウルムチ)の開通によってその発展が促進された。米,タバコ,雑穀,畜産物など物産が豊富。南東に麦積山(ばくせきざん)石窟がある。131万人(2014)。

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