いすみ

改訂新版 世界大百科事典 「いすみ」の意味・わかりやすい解説

いすみ[市]

千葉県南東部の市。2005年12月夷隅(いすみ)町,大原(おおはら)町,岬(みさき)町が合体して成立した。人口4万0962(2010)。

いすみ市西部の旧町。旧夷隅郡所属。人口7952(2000)。夷隅川の中流域を占め,町域のほぼ中央を夷隅川が東流する。中心集落の国吉近世市場町で,現在も市が立つ。夷隅川沿いの低地は米作が行われ,県内で最も早く耕地整理が行われた。天然ガス噴出による塩害をこうむってきたが,1978年に鉱毒対策ダムがつくられて解決した。天然ガスを原料としてヨードや医・農薬品を製造する中小化学工場がある。行川の妙泉寺周辺はヒメハルゼミ発生地。人口流出が進み,過疎地域の指定をうけている。いすみ鉄道線が通じる。

いすみ市南東部の旧町。旧夷隅郡所属。人口2万0531(2000)。太平洋に面し,房総丘陵末端を含む。中心集落の大原は近世は市場町で,3・8の六斎市が開かれていた。昭和初期に木原線(現,いすみ鉄道線)が大多喜まで開通してからは商圏を内陸部に伸ばした。漁業が盛んで,沖合イワシ漁のほかアワビ,イナダイセエビなどが多く,水産加工も行われる。漁港や冷蔵施設,流通施設の整備も進められている。農業は米作が中心。海岸は南房総国定公園に含まれ,北部は砂浜,南部は磯浜となり,海水浴のほか釣客も多い。外房線の便がよくなった1970年代以降,千葉市などへの通勤者がふえている。照願寺,大聖寺など古刹(こさつ)が多く,大聖寺の不動堂(重要文化財)は元禄期(1688-1704)に移築されたもので,室町時代の建築とされる。

いすみ市北東部の旧町。旧夷隅郡所属。人口1万4352(2000)。太平洋に面し,房総丘陵南部を流れる夷隅川下流域を占める。北西部と南部に丘陵があるほかは,比較的平たんである。町名太東崎にちなむ。中心集落の長者,椎木(しいぎ)はともに市場町として発達したが,長者は江戸時代,房州街道有数の宿場町でもあった。米作を中心に,梨,ナツミカンなどの果樹や野菜が生産される。1974年につくられた太東漁港には,タコ,タイなどが水揚げされる。南部の三門(みかど)からは磨き砂として使われる凝灰質の細砂を産する。南房総国定公園に含まれる太東崎は九十九里浜の眺望にすぐれ,海浜植物群落(天)がある。坂東三十三所32番札所の清水(せいすい)寺は日本の三清水寺の一つに数えられる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「いすみ」の意味・わかりやすい解説

いすみ(市)
いすみ

千葉県南東部、房総(ぼうそう)半島にある市。2005年(平成17)、夷隅(いすみ)郡夷隅町、大原町(おおはらまち)、岬町(みさきまち)が合併して市制施行、いすみ市となった。市名は古代以来の夷隅郡の郡名による。東は太平洋に面し、市域を夷隅川が貫流。外房(そとぼう)海岸沿いにJR外房線、国道128号が走り、外房線大原駅から内陸大多喜(おおたき)町へいすみ鉄道が通じる。これにほぼ並行して国道465号が走る。古く夷隅郡は『日本書紀』にみえる「伊甚(いじむ)国造」(『古事記』では「伊自牟国造」)の領域であったとされ、屯倉(みやけ)が置かれたと伝える。南北朝期には犬懸上杉氏と結ぶ狩野氏が大野(おおの)城を築き拠点にした。万木(まんぎ)には1412年(応永19)土岐時政が万喜(まんぎ)城を築城。同城は1590年(天正18)徳川氏の家臣本多忠勝に攻められ落城した。江戸初期、旗本堀氏が国吉苅谷(くによしかりや)村に陣屋を置いた。堀氏は1642年(寛永19)に大名となり、苅谷藩が成立。しかし、陣屋は1668年(寛文8)に市原郡八幡村(市原市)に移った。近世、国吉苅谷村では六斎市(ろくさいいち)が立ち、交通の要衝であった臼井(うすい)村の長者(ちょうじゃ)町は、宿場町、近郷の物資が集散する市場町として栄えた。また大原町にも宿場が形成された。

 現在夷隅川中流の平地では米作、そのほかではトマト、キュウリなどの野菜やナシの栽培、酪農が盛ん。沿岸部の大原漁港、太東(たいとう)漁港などではイワシ、イナダなどの沖合漁業が行われている。大聖寺(だいしょうじ)不動堂、照願寺(しょうがんじ)の紙本著色親鸞上人(しんらんしょうにん)絵伝は国指定重要文化財。海食崖(がい)の断崖上にある太東埼灯台、太東海浜植物群落(国指定天然記念物)、日在(ひあり)浦などは南房総国定公園に属し、観光地となっている。面積157.50平方キロメートル、人口3万5544(2020)。

[編集部]


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百科事典マイペディア 「いすみ」の意味・わかりやすい解説

いすみ[市]【いすみ】

千葉県南東部に位置し,東部を太平洋に面する市。2005年12月,夷隅郡夷隅町,大原町,町が合併し市制。JR外房線,いすみ鉄道,国道128号線,465号線が通じる。東日本大震災で,市内において被害が発生。157.44km2。4万962人(2010)。

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