日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヒメハルゼミ」の意味・わかりやすい解説
ヒメハルゼミ
ひめはるぜみ / 姫春蝉
[学] Euterpnosia chibensis
昆虫綱半翅(はんし)目同翅亜目セミ科Cicadidaeの昆虫。ハルゼミに似ているが、雄の腹部第4節の両側に貝殻状の隆起物がある点で区別される。体長25~30ミリメートルの小形で細身のセミで、体はオリーブ色に黒色の斑紋(はんもん)をもつ。はねは透明。雌の産卵管はきわめて長く、腹端を大きく越えて伸長する。本州、四国、九州、琉球(りゅうきゅう)諸島に分布し、北限は関東地方。一般に産地は局所的で、北限の茨城県、新潟県、千葉県の産地は国の天然記念物に指定されている。7月に出現し、カシ類などの照葉樹の小枝に止まって大合唱をする。合唱時には個々の鳴き声は聞こえず、森全体がうなるようである。琉球諸島には2亜種が知られ、八重山(やえやま)列島には別種のイワサキヒメハルゼミE. iwasakiiが分布する。
[林 正美]