イワヅタ(読み)いわづた

日本大百科全書(ニッポニカ) 「イワヅタ」の意味・わかりやすい解説

イワヅタ
いわづた / 岩蔦
[学] Caulerpa

緑藻植物、イワヅタ科の海藻。陸生のつる性植物のツタに似るので、この名がある。体形は、岩上をはう匍匐(ほふく)茎部、そこから出る緑色の葉片部、そして岩内に侵入する根部の3部からなる。しかし、これら3部の間には隔壁がなく、体全体の原形質はつながっている非細胞体制をとる。緑色の葉片部の形状はいろいろに変化するので、それによって種、変種に分類されるが、変形が多くて分類はむずかしい。暖海性で、奄美(あまみ)諸島沿岸では種類も多く、1年を通じて生育する。本州の中南部沿岸ではフサイワヅタヘライワヅタの2種だけが広く分布し、まれにクロキヅタ、フジノハヅタなどが産するが、生育期間も夏季に限られて一年生藻になる。これらのなかで、フサイワヅタは分布が広く津軽海峡周辺まで北上し、また200メートル内外の深海にも産する。このフサイワヅタを、九州南部ではキクノリとよんで古くから食用としている。形状がやや似たセンナリヅタ類はフィリピンやポリネシアでは食用として広く愛好される。食用イワヅタ類の葉片部の形状はブドウの房に似ているため、英語では普通sea grapeとよぶが、最近では、この語を訳してウミブドウという名も使われ始めている。なお採取葉片の保蔵には塩まぶしにすることが多く、保蔵中は、外部の高浸透圧のために葉片はくしゃくしゃに縮まっている。これを淡水に漬けると、塩抜きと葉片の膨潤がおこり、こりこりとした口当りのよい食品となり、二杯酢などにして食べる。

[新崎盛敏]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「イワヅタ」の意味・わかりやすい解説

イワヅタ(岩蔦)
イワヅタ
Caulerpa

藻類ミル目に属し,低潮線付近の岩上にはうように着生する藻類。ヘライワヅタ,フサイワヅタ,ヒメイワヅタ,スリコギヅタ,クロキヅタなどいろいろの種がある。いずれも岩上をはっている茎状部はところどころで仮根をおろし,また小枝が立上がっている。その小枝からはさらに種によって葉状,倒卵状,球状の小枝を生じるが,それらの小枝はすべて細胞が互いに連なった多核体をなしており,いわゆる非細胞生物であることがわかる。

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