日本大百科全書(ニッポニカ) 「インドへの道」の意味・わかりやすい解説
インドへの道
いんどへのみち
A Passage to India
イギリスの作家E・M・フォースターの長編小説。1924年刊。大英帝国治下のインドの一都市チャンドラポアで判事をしている若いイギリス人ロニーを、その母ムーア夫人と、ロニーの婚約者のアデラ・クウェステッドが訪ねてくる。人種的偏見を抱かず公正にインドを理解しようとする2人に感激したインド人の青年医師アジズは彼らを洞窟(どうくつ)見物に案内するが、ロニーとの結婚に疑問をもっていたアデラは、洞窟の神秘的な反響音に錯乱し、アジズに犯されかけたと思い込んで彼を告訴する。医師と町民は無実を、イギリス人は有罪を主張し、町は両者の対立で緊張する。西欧の秩序と混沌(こんとん)の東洋という異文化間の相克(そうこく)を背景に、人間の愛、知性と感情、政治と道徳などの本質と限界を追及する傑作。
[小野寺健]