インドへの道(読み)インドヘノミチ(英語表記)A Passage to India

デジタル大辞泉 「インドへの道」の意味・読み・例文・類語

インドへのみち【インドへの道】

原題A Passage to Indiaフォースター長編小説。1924年刊。自身インドでの滞在経験をもとに、植民地における支配民族と被支配民族の交流文明衝突を描く。1984年、デイビッド=リーン監督により映画化

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「インドへの道」の意味・わかりやすい解説

インドへの道
いんどへのみち
A Passage to India

イギリスの作家E・M・フォースターの長編小説。1924年刊。大英帝国治下のインドの一都市チャンドラポアで判事をしている若いイギリス人ロニーを、その母ムーア夫人と、ロニーの婚約者のアデラ・クウェステッドが訪ねてくる。人種的偏見を抱かず公正にインドを理解しようとする2人に感激したインド人の青年医師アジズは彼らを洞窟(どうくつ)見物に案内するが、ロニーとの結婚に疑問をもっていたアデラは、洞窟の神秘的な反響音に錯乱し、アジズに犯されかけたと思い込んで彼を告訴する。医師と町民無実を、イギリス人は有罪を主張し、町は両者の対立で緊張する。西欧秩序混沌(こんとん)の東洋という異文化間の相克(そうこく)を背景に、人間の愛、知性と感情、政治と道徳などの本質と限界を追及する傑作

[小野寺健]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「インドへの道」の意味・わかりやすい解説

インドへの道 (インドへのみち)
A Passage to India

イギリスの作家E.M.フォースターの小説。1924年刊。インドの知的な医師アジズは,マラバールの洞窟でのイギリス婦人暴行未遂で起訴されるが,彼女が妄想であることを認め一件は落着。彼を擁護する教師フィールディング,自国人に批判的なモア夫人などのイギリス人を登場させ,相互理解への努力を肯定しながら,それにもかかわらず存在するインド人とイギリス人の民族的違和感,その奥に横たわる東洋と西洋の精神的対立を描いた傑作。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「インドへの道」の意味・わかりやすい解説

インドへの道
インドへのみち
A Passage to India

イギリスの作家 E. M.フォースターの小説。 1924年刊。イギリスの植民地インドでは,支配階級としてのイギリス官吏をめぐる白人社会と,現地民との間にほとんど相互理解がなく,まして友情もない。ムア夫人はイギリス本土から,息子の嫁にと思う娘アデラを連れてインドに来る。彼女は偏見なくインド人の心のなかに入っていこうとし,インド人青年医師アジズとの間に友情が生れかけるが,彼がアデラを案内してマラバル洞窟に行ったとき,アデラは異様な雰囲気のため妄想にとらわれ,彼に乱暴されかけたと思い込む。その裁判をきっかけにして,再びインドにおける2つの世界の対立が戻ってくる。東洋の考え方や感情と西洋のそれとの出会い,対立の問題,イギリス人の偏狭さと無理解など,いろいろな主題が物語を通して提出されている。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

デジタル大辞泉プラス 「インドへの道」の解説

インドへの道

1984年製作のイギリス・アメリカ合作映画。原題《A Passage to India》。E・M・フォースターの同名小説の映画化。監督:デビッド・リーン、出演:ジュディ・デイビス、ペギー・アシュクロフト、アレック・ギネスほか。第57回米国アカデミー賞作品賞ノミネート。同助演女優賞(ペギー・アシュクロフト)、作曲賞受賞。

出典 小学館デジタル大辞泉プラスについて 情報

世界大百科事典(旧版)内のインドへの道の言及

【リーン】より

…《アラビアのロレンス》から《ドクトル・ジバゴ》(1965),《ライアンの娘》(1970)と70ミリの大画面を駆使した文芸色豊かなメロドラマで興行価値100パーセントの巨匠となり,とくに《ライアンの娘》は,70ミリのカメラで撮影された〈真の70ミリ映画〉の最後の作品といわれる。1984年から85年にかけては,長年の夢だったE.M.フォースターの小説《インドへの道》の映画化を実現させた。【広岡 勉】。…

【フォースター】より

…《見晴しのある部屋》(1908),《ハワーズ・エンド》(1910)でも,異質の文化との結合の必要とその困難さを精緻な文章で語り,一種の文明批評の域にまで達した。このテーマをヨーロッパ以外の世界にまで広げて追求したのが《インドへの道》(1924)で,この作品は初めてインドを旅行した1912‐13年以来書き継がれたものである。その後ほとんど小説の筆を絶つが,母校に職を得,小説論《小説の諸相》(1927),社会的発言の多いエッセー集《アビンガーの収穫》(1936),理想的ではないが多様性と批評を許容する民主主義を支持した《民主主義二唱》(1951)などの評論を残した。…

※「インドへの道」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

大臣政務官

各省の長である大臣,および内閣官房長官,特命大臣を助け,特定の政策や企画に参画し,政務を処理する国家公務員法上の特別職。政務官ともいう。2001年1月の中央省庁再編により政務次官が廃止されたのに伴い,...

大臣政務官の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android