改訂新版 世界大百科事典 「ウナムノ」の意味・わかりやすい解説
ウナムノ
Miguel de Unamuno y Jugo
生没年:1864-1936
スペインの思想家,作家。北東部の工業都市ビルバオのバスク系家庭に生まれたが,1891年以降,サラマンカ大学ギリシア語教授として,またスペインの精神革命を志す〈98年の世代〉の指導者として,カスティリャを中核とするスペイン論を展開した。とくに95年に発表した《生粋主義をめぐって》は,ガニベトの《スペインの理念》(1897)とともに,以後のスペイン論に多大の影響を与えた。初めスペンサー流の科学万能主義から出発したが,97年の宗教的な危機の体験,翌年の米西戦争の敗北などを機会に,彼の思想は宗教的苦悩に満ちた実存的なそれへの傾斜を深めていく。1905年に発表した《ドン・キホーテとサンチョの生涯》では,狂気の遍歴の騎士のうちに不滅を求める人間存在の悲劇的運命を投影し,さらに彼の名を世界的なものにした《生の悲劇的感情》(1913)において,〈肉と骨を備えた〉具体的個たる人間の,理性と感情,論理と実存の永遠の葛藤を描いた。独裁者プリモ・デ・リベラの圧政に反対して24年に追放され,後フランスに亡命した6年間以外は終生サラマンカにとどまり,哲学的エッセーのみならず,詩や小説(代表作は1914年の《霧》)や戯曲など多方面にその才能を発揮した。次代のオルテガ・イ・ガセットとは異なって後継者には恵まれなかったが,〈南欧のキルケゴール〉として,その影響は深く現代にまで及んでいる。
執筆者:佐々木 孝
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報