日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウラジロ」の意味・わかりやすい解説
ウラジロ
うらじろ / 裏白
里白
Umbrella ferns
[学] Gleichenia japonica Spr.
ウラジロ科の常緑性の大形のシダ。日本の東北地方南部を北限とし、南はフィリピンまで分布する。地中を長くほふくする地下茎をもち、そこから直立する葉の中軸は、1対の羽片を出すたびにいったん成長を止めるという独特の伸び方をする。羽片は長楕円(ちょうだえん)形で、表面はつやのある緑色。小羽片はさらに羽状に深裂する。胞子嚢(ほうしのう)群は中脈と縁の中間につき、包膜はない。暖地に生えるウラジロは4、5対の羽片をつけ、高さ2メートルを超える。葉の裏面が白色を帯びるため、この名がある。また一般に「シダ」という場合は、ウラジロをさすことが多い。九州ではヘゴとよぶ地方が多く、オオシダ、モロムキ、ホナガなどの名もある。常緑性の草木には呪力(じゅりょく)、霊力があると、古代から信じられていたものが多いが、ウラジロもこうした植物の一つで、羽片がしだれることを「歯垂(しだ)る」にあて、さらに「齢垂る」にかけて長寿の意味をももたせ、正月を祝う注連(しめ)飾りに使われてきた。また西日本では、美しい光沢のある褐色の葉柄を編んでシダ細工をする。マレーシアでもこの類の葉柄や地下茎を使って部屋の内壁や椅子(いす)をつくる。民間薬としては、冬季に全草をとって乾燥させ、これを煎(せん)じて服用する。腹膜炎や浮腫(ふしゅ)に効くという。
近縁種のコシダは海辺の明るい丘陵地に群生する。ウラジロより小形だが、中軸から分枝した羽片はさらに二またになる。中国では全草を解熱、利尿、止血などの薬用として利用し、オーストラリア先住民は地下茎から採ったデンプンを食用とする。九州以南にまれに産するカネコシダも近縁種の一つであるが、葉の裏は白くない。佐賀県武雄(たけお)市黒髪山のカネコシダは国指定の天然記念物。かつて山里の子供たちはこのたぐいの葉をグライダーに見立て、谷を渡る風に放って遊んだという。
[栗田子郎]