翻訳|echo
大気中を伝わる音波が固体面によって反射され,音源の方向に戻って来る現象。こだま,エコーともいう。一般には野外で音波が山体,崖,木立,家屋など大規模な地物で反射して来る場合にいい,室内で起こる同種の現象は反響(場合によっては残響)と呼ぶ。
山彦の現象は,自然現象ではなく,山谷に人以外の者がいてそれが人の声をまねしているのだと考えられていた。茨城では〈あまのじゃく(天邪鬼)〉がまねをするのだといい,静岡では〈山の小僧〉,鳥取では呼子(よぶこ)とか呼子鳥(よぶこどり)というものが声を発しているのだと伝えている。あまのじゃくは人に逆らい,神に反抗する存在であるが,山中にあって人の口まねをするものもこう呼んだのである。つまり,山彦は山中に住むなんらかの神霊の行為と考えられていたのである。山母,山姥とか山彦,木霊(こだま)などはみな山の神的存在であり,山彦は山の神の信仰が衰退して妖怪化したものとみられている。昔話の中の〈さとりのわっぱ〉では山男や天狗,〈さとり〉という怪物が,山小屋にいる男の心をさとって思っていることをいいあてるが,突然炉の木がはねて退散するという話になっている。なお,この現象を山の木の精霊である木霊のしわざと考え,〈こだま〉と呼ぶこともある。また,ギリシア神話では森のニンフのエコーとみている。
→木霊
執筆者:畠山 久尚+飯島 吉晴
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山や谷間などで音が反射して返ってくること。木霊(こだま)、エコーなどともいう。山あいで大声でよぶと、その声が山肌などで反射して、時間が多少ずれて戻ってくる現象である。音波が空気中を進行するとき固体に当たると、光波と同じような法則に従って反射する。この場合原音が短く、かつ反射面が音源よりかなり遠方にあるときに山彦ははっきり聞こえる。反射面が不規則な形をしていると、反射が複数でおこり音がいくつも聞こえたり、または長引いて分明を欠くことがある。音波の反射のおこるのは、かならずしも固体面とは限らない。森の境界や雲の面でも反射する。たとえば砲声は晴れた日には短く鋭く聞こえるが、雲が低く垂れ込めているときには雲に反射して一発の砲声がいくつにも聞こえ、いわゆるとどろくという感じとなる。
地形上とくに反射がよくおこって山彦が明瞭(めいりょう)に出る所がある。また鉄橋の下の道路などで大声を出すと、わーんと反響するのはよくみられる現象である。山彦ということばは、もともと山の神の意味で、山の神が答える声という伝承に由来するといわれる。
[大田正次]
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…残響と同じ意味で用いられることもあるが,音響学的には継続時間の短い音を出したとき,その反射音が直接音と時間的に分離して1回または繰り返して多数回聞こえる現象をいう。山彦や鳴竜(フラッターエコー)がその典型的な例で,前者は叫び声などが対向する山で反射され,時間をおいて聞こえる現象であり,後者は対向する二つの壁面の間で反射が繰り返されるために生ずる現象である。鳴竜としては日光東照宮本地堂が有名で,竜の絵がかかれた天井(わずかに凹面となっている)の下で拍手をすると,天井と床との間で多重反射が生じ,ブルルル……という音が聞こえる。…
※「山彦」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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