エチレンジアミン四酢酸(読み)えちれんじあみんしさくさん(英語表記)ethylenediaminetetraacetic acid

日本大百科全書(ニッポニカ) 「エチレンジアミン四酢酸」の意味・わかりやすい解説

エチレンジアミン四酢酸
えちれんじあみんしさくさん
ethylenediaminetetraacetic acid

エチレンジアミンテトラ酢酸ともいい、EDTAと略称される。無色の結晶性粉末。

 エチレンジアミンとクロロ酢酸ナトリウムとを水酸化ナトリウム溶液中で加熱反応させ、塩酸を加えると沈殿として得られる。水には難溶であるが、5%以上の無機酸には可溶。エタノールエチルアルコール)、エーテルには不溶。アルカリ性溶液には四塩基酸として溶け、アルカリの量に応じて一ないし四アルカリ塩を生成する。ほとんどすべての金属イオンと水溶性の安定なキレート化合物をつくる。キレートの構造はEDTAが六座配位子として金属に配位したものから、五座、四座、二座配位子となったものまで多様である(配位子のときはedta略号が用いられる)。水溶性の安定なキレートをつくることを利用して、広範な用途がある。

(1)ゴム、植物油、医薬、食品などに含まれる有害金属の除去、不活性化(重金属拮抗薬
(2)硬水軟化剤ボイラーの清浄剤
(3)医学への応用としてX線造影剤腎臓(じんぞう)結石の除去、血液の凝固防止(抗凝血薬)など
(4)分析化学への応用として、各種金属イオンのキレート滴定試薬、比色分析用試薬、マスキング剤、希土類元素イオンの分離
などに用いられている。

[山本 学]



エチレンジアミン四酢酸(データノート)
えちれんじあみんしさくさんでーたのーと

エチレンジアミン四酢酸


 分子式 C10H16N2O8
 分子量 292.25
 融点  220℃(分解)
 沸点  ―
 溶解度 0.34g/100ml(水25℃)

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「エチレンジアミン四酢酸」の意味・わかりやすい解説

エチレンジアミン四酢酸
エチレンジアミンしさくさん
ethylenediaminetetraacetic acid

EDTAと略記する。融点 240℃ (分解) の無色結晶性粉末。四塩基酸の性質を示し,アルカリ水溶液と反応させると,アルカリの量に応じ,1ないし4アルカリ塩を生成する。アルカリ土類金属をはじめ,ほとんどの金属イオンと安定な水溶性の錯塩 (キレート) を生成するので,金属イオンの分離,除去,分析のための試薬として広く使われる。これを用いる滴定法は EDTA滴定あるいはキレート滴定と呼ばれる。また金属イオンとの錯形成により金属イオンを捕捉するので,金属イオンの触媒作用によるビタミンCの酸化や蛋白質の加水分解などの防止に役立ち,食品中の痕跡金属による変質の防止,洗浄剤,硬水の軟化剤,ボイラー洗浄剤などとして役立つ。さらに微量の金属イオンにより作用が促進されたり阻害されたりする酵素の精製過程や,反応の解明に利用される。

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