エムポックス(読み)えむぽっくす(英語表記)mpox

デジタル大辞泉 「エムポックス」の意味・読み・例文・類語

エムポックス(mpox)

M痘

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共同通信ニュース用語解説 「エムポックス」の解説

エムポックス(サル痘)

エムポックスウイルスによる感染症発熱頭痛リンパ節の腫れといった症状が出た後に、顔などに発疹ができ、水ぶくれとなる。多くは2~4週間で自然に回復するが、まれに重症化する。感染者の皮膚体液血液などに接触して感染するほか寝具を介してうつることもある。もともとアフリカで確認されていたが、2022年以降、世界中に広がり、国内でも死者が確認されている。天然痘ワクチンに発症予防効果がある。(共同)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「エムポックス」の意味・わかりやすい解説

エムポックス
えむぽっくす
mpox

エムポックスウイルスの感染によっておこる急性発疹(ほっしん)性疾患。1958年にカニクイザルの疾患として初めて報告された人獣共通感染症であり、ヒトでの感染は1970年に初めてザイール(現、コンゴ民主共和国)で報告された。以降、おもにアフリカ中央部から西部にかけて発生しているほか、アフリカ以外の国においては、流行地域からの帰国者の感染や、輸入動物からの感染が確認されてきた。

 自然界ではアフリカに生息する齧歯(げっし)類(ネズミの仲間)が宿主と考えられており、動物からヒトへの感染経路としては、感染動物による咬傷(こうしょう)、あるいは感染動物の血液・体液・皮膚病変(発疹部位)との接触感染が確認されている。

 おもな症状は発熱と発疹である。ウイルス感染後、潜伏期間を経て発症し、多くは2~4週間程度で自然に回復するが、小児など一部の例で重症化や死亡もみられる。ヒトからヒトへの感染については、性的接触を含む濃厚接触者の感染や、患者が使用したリネン類を介した医療従事者の感染報告があり、患者の体液や皮膚病変等を介した飛沫(ひまつ)感染や接触感染がおこると考えられている。なお、本疾患の予防には痘瘡(とうそう)ワクチン(天然痘ワクチン)の有効性が知られている。

[編集部 2023年4月20日]

2022年の世界的流行と国内発生

2022年5月、海外渡航歴のないエムポックス患者がイギリスで報告されたことを契機として、エムポックスの世界的な流行が生じた。世界保健機関(WHO)は2022年7月に「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」(PHEIC)を宣言(2023年5月に終了宣言)、WHOが管轄する全6地域の117の国と地域では、2022年1月1日から2024年1月31日までに9万人を超える累積感染者数および179人の累積死亡者数が報告され、とくにアメリカやブラジルなどで大きな流行となった。

 日本において、本疾患は感染症法上の4類感染症に指定されていたが、集計を開始した2003年(平成15)以降、長らく発生例がなかった。しかし、世界的流行に呼応する形で、2022年(令和4)7月に、ヨーロッパへの渡航歴をもつ国内1例目の患者が報告され、以降も散発的に発生が確認されている(2024年2月25日時点で感染者数240人、死亡者数1人)。

 なお、エムポックスmpoxの「m」はサルmonkeyの頭文字をとったもので、それまでは「monkeypox(サル痘)」とよばれていたが、2022年の世界的流行を契機にWHOが現名称に変更した経緯がある。名称変更の背景には、特定動物への誤解や偏見(「サル痘」の名称は、本疾患が最初に発見された動物がカニクイザルだったことに由来するが、サルが感染源であるかのような印象を与えやすい等)を避けるなどの目的のほか、感染者への非難や差別等につながった例があるとされ、WHOが2022年11月に変更を提唱した。日本では、2023年2月の厚生労働省厚生科学審議会感染症部会において、「M痘」と「エムポックス」の二つの案が提示されたが、「『痘』という言葉で想起される臨床像と実際の臨床症状とがあわない」「WHOの名称とあわせたほうがわかりやすい」などの理由から、名称は「エムポックス」となった。2023年5月、感染症法上の名称が「サル痘」から「エムポックス」へと変更され、ウイルスの名称も「サル痘ウイルス」から「エムポックスウイルス」へと変更された。

[編集部 2024年7月18日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「エムポックス」の意味・わかりやすい解説

エムポックス

「サル痘」のページをご覧ください。

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