食の医学館 の解説
えんどうまめぐりーんぴーす【エンドウマメ・グリーンピース】
《栄養と働き》
マメ科の1年草で、原産地は地中海沿岸。古代エジプト第18王朝のツタンカーメン王のお墓から、副葬品とともに発掘されたエンドウマメの種子が発芽し、大きな種子をつけ、それが全世界に配布されたという説があります。わが国へは10世紀の奈良時代に遣唐使が中国より持ち帰ったとされていますが、野菜として用いられたのは江戸時代からで、一般に普及したのは明治時代からです。
野菜用のエンドウマメには、若いさやを食べる「サヤエンドウ」と、未熟果の実を食べる「グリーンピース」があります。近年では、実がグリーンピース大になってもさやごと食べられる「スナップエンドウ」も登場。甘みの強い新しいタイプとして注目されています。
〈食物繊維、不飽和脂肪酸が豊富、動脈硬化予防も期待できる食材〉
○栄養成分としての働き
<エンドウマメ>
完熟した豆を乾燥させたエンドウマメには、青・赤・白の3種があり、わが国では青色エンドウが主流です。
エンドウマメの主成分は炭水化物、たんぱく質で、ビタミンB群が多いのが特徴です。とくにビタミンB1が多く、乾燥豆の場合100g中0.72mg含有しています。
ビタミンB1には疲労物質をすみやかに排出する働きがあるので、疲労回復に役立ちます。鉄分も多く含まれ、貧血予防にも有効です。
また、カロテンの含有量が100g中92mgと多い点も特徴の1つです。カロテンには制がん作用や活性酸素を抑える働きがあり、皮膚粘膜(ねんまく)のかさつきや老化予防などにも有効です。
食物繊維の含有量も17.4gとダイズ(17.1g)にくらべて多く含みます。食物繊維が血糖値の安定に作用することが解明されており、中国では糖尿病の人の食事療法に用いられています。不溶性の食物繊維が多く、便をやわらかくし、便通をうながします。この食物繊維には悪玉コレステロールを減らす働きもあります。さらに、リノール酸、リノレン酸、オレイン酸などの不飽和脂肪酸を多く含むので、動脈硬化の予防にも効果が期待できます。
<グリーンピース>
一方、グリーンピースは、たんぱく質、糖質、ビタミンB群をはじめ、Cや葉緑素などの栄養素が豊富です。ビタミンB群では、B1、B2、B6、ビオチン、コリンが多く、新陳代謝を円滑にし、疲労回復をうながします。アミノ酸組成もすぐれていて、リジン、アルギニン、アスパラギン酸などを多く含んでいます。また、カロテンが100g中420mgと多いので、かぜの予防、肌荒れなどに効果的です。
《調理のポイント》
エンドウマメは外皮がかたいため、長時間水につけてもどす必要があります。この際、ビタミンB1などの水溶性の成分が流れでてしまうので、つけておいた水は調理に利用しましょう。また、煮るときは、最初の煮汁に薬効成分が豊富に含まれているので、煮こぼすのは避けたほうがいいでしょう。
鉄分の吸収を高めるためには、たんぱく質やビタミンCの多い食材との食べ合わせが有効です。
グリーンピースはできるだけさやつきを購入し、調理の直前にむいて使うのがおすすめです。缶詰は処理の過程で水溶性ビタミンがほとんどなくなっているので、効用は期待できません。