江戸中期に筆録された物語。1巻。関ヶ原の戦いに父に従い大垣城に籠城(ろうじょう)していた一女性が、年老いてから当時の体験を物語ったもので、筆録者については名前も明らかでない。この女性は石田三成(いしだみつなり)に仕えた山田去暦(やまだきょれき)という者の娘で、落城寸前に父とともに城を脱出して土佐(高知県)に逃れ、そこで結婚したが、夫に死別してからは甥(おい)に養われ、寛文(かんぶん)(1661~73)ごろ80余歳で死去したという。書名の「おあむ」は御庵で老尼の意味であろう。軽微なものながら、口語史上、参考になることが少なくない。
[岡本良一]
『杉浦明平著『戦国乱世の文学』(岩波新書)』▽『湯沢幸吉郎校訂『雑兵物語・おあむ物語』(岩波文庫)』
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