改訂新版 世界大百科事典 「オウギガニ」の意味・わかりやすい解説
オウギガニ (扇蟹)
Leptodius exaratus
房総半島以南の西太平洋,インド洋に広く分布する甲殻綱オウギガニ科のカニ。岩礁でもっともふつうに見られるカニの1種で,石の下にすみ,動きはあまり速くない。外敵に対してははさみ脚を振り上げて威嚇の姿勢をとることもあるが,はさみ脚と歩脚を縮めて死んだふりをすることが多い。甲幅4cm。甲は前方に開いた扇形で,甲域が明りょうに分けられ,前側縁に三角形の歯が五つある。暗青灰色から暗褐色まで個体により色彩はいろいろで,白色や灰白色の不規則斑,黒褐色の大きな斑紋などがあることも多く,でこぼこの甲面とも合わせて,周囲に対するカムフラージュ効果があると考えられる。産卵期は初夏から盛夏。甲の前側縁に6歯あるムツハオウギガニL.sanguineusも個体数が多いが,どちらかといえば南方系である。サンゴ礁にはオウギガニ科の属種が多く,いずれも形がよく似ている。
執筆者:武田 正倫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報