動物が急に動かなくなって、あたかも死んだような姿勢をとること。多くの昆虫やクモをはじめ脊椎(せきつい)動物においてもみられる。ある種の甲虫では、自分の止まっている枝や草が急に揺れると、肢(あし)や触角を縮めて地上に落下し、しばらくそのまま動かない。これは、強い刺激に対して全身の筋肉の緊張状態が反射的に変化することによっておこると考えられている。
擬死は、適応的には捕食者に対する防衛行動の一つとみなすことができる。捕食者は一般に動くものに対してしか捕食行動を示さず、動かないものには手を出さない。したがって、地上で擬死の姿勢をとり続ける甲虫は、捕食者の目から逃れることができる。一方、哺乳(ほにゅう)類、鳥類、ヘビなどでは敵に攻撃されている最中に擬死の姿勢をとるものがある。この場合は、動かないことによって一時的に捕食者の興味を失わせ、そのすきにすばやく逃げ去る戦略であると考えることができる。
[桑村哲生]
『エドムンズ著、小原嘉明・加藤義臣訳『動物の防衛戦略』全2冊(1980・培風館)』
動物が急激にあるいは不意に与えられた刺激に対して,まったく動かなくなるという反応を示すこと。ちょうど死んだように見える点からこのように呼ばれるのだが,凍りついたようになるという意味でfreezingという表現もされる。動かなくなることは捕食者の目にとらえにくくなることを意味するので,結果的に身を守る働きをしている。枝や葉の上から落ちた甲虫が地上に落ちるとひっくり返って動かなくなる。あるいはヨトウなどガの幼虫が落下すると,しばらく死んだように動かないなどがその例で,急激な変化に対する一種の走触性の反射と考えられている。時間がたつと動き出し,速やかに安全な場所に移動する。オポッサムやネズミなども急激なショックで,あおむけにひっくり返り死んだような状態になって攻撃者の目をそらす。これは急激な刺激で筋肉の反射性緊張が変わり,全身に運動の制止が伝わって動かなくなる生理的な現象で,催眠状態に似ている。このほか,鳥類やヘビなど多くの動物にも擬死がみられる。
執筆者:奥井 一満
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