食の医学館 の解説
おなかのちょうしをととのえるしょくひん【おなかの調子をととのえる食品】
「おなかの調子をととのえる食品」に利用されている成分は、オリゴ糖類、乳酸菌類、食物繊維類の3つにわけられます。
〈腸内細菌のエサとなって善玉菌をふやすオリゴ糖類〉
腸には約100兆個以上の菌が棲(す)んでおり、善玉菌と悪玉菌があります。善玉菌とはビフィズス菌や乳酸菌などのことで、人体にとって有用な菌です。
オリゴ糖は摂取されると消化されないまま大腸まで届き、そこで腸内細菌のエサとなります。ビフィズス菌などの善玉菌が好んで食べるため、善玉菌が増殖(ぞうしょく)します。このとき、腸の中が酸性化するので、有害菌の増殖が抑えられます。その結果、腐敗物などが減少し、腸内環境が改善されるのです。また、生成された有機酸は腸を刺激して腸の蠕動運動(ぜんどううんどう)を活発にし、腸管内の浸透圧(しんとうあつ)を高めて排便をうながすのです。
「おなかの調子をととのえる食品」には、おもに以下のオリゴ糖類が利用されています。
( )内は原料。
・キシロオリゴ糖(バガス、コーンコブ、綿実セリなどからアルカリ抽出して得られたキシラン)
・フラクトオリゴ糖(高濃度のしょ糖溶液)
・ダイズオリゴ糖(脱脂ダイズ粉からアルコール沈殿させて得られたダイズホエー)
・イソマルトオリゴ糖(でんぷん)
・乳果オリゴ糖(しょ糖と乳糖の高濃度混合液)
・ラクチュロース(乳糖)
・ガラクトオリゴ糖(高濃度の乳糖溶液)
〈乳酸菌を生きたまま腸まで届かせる食品〉
オリゴ糖類は善玉菌のエサとなって結果的に善玉菌を増殖させるわけですが、乳酸菌類を含む食品は、乳酸菌そのものを生きたまま腸まで届ける働きがあります。その結果、善玉菌をふやし、腸内環境を改善するのに役立つのです。
乳酸菌とは、糖を分解して乳酸をつくる働きをする菌のグループの総称です。わかりやすくわけると、3つのグループに大別できます。
漬けものなどに利用されている「醸造(じょうぞう)乳酸菌」(フェカリース菌など)、ヨーグルトやチーズに使われる「酪農(らくのう)乳酸菌」(ブルガリクス菌、サーモフィルス菌など)、ヒトの腸内に棲んでいる「腸内乳酸菌」(ビフィズス菌など)です。
通常のヨーグルトなどに含まれている乳酸菌は腸まで届きにくいため、特定保健用食品として売られているものには、ビフィズス菌などの善玉菌が加えられています。
それらが腸内細菌のバランスをととのえ、悪玉菌の増殖を抑えるのです。
利用されている乳酸菌類は、ラクトパチルスGG株、ラクトパチルスカゼイシロタ株、ビフィドバクテリウム・ブレーベ・ヤクルト株、ビフィドバクテリウム・ロンガムBB536、ラクトパチルスアシドフィルスSBT2062、ビフィドバクテリウム・ロンガムSBT2928などです。
〈腸の蠕動運動を活発にする食物繊維類〉
食物繊維には水溶性のものと不溶性のものがあり、いずれも食べるとそのまま大腸まで送られていきますが、その後の働きが若干異なります。
水溶性のものは、腸内細菌に利用されて腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)を改善する働きをします。有機酸をつくりだすので、腸を刺激して、蠕動運動を活発にする効果が期待できます。
不溶性のものは、保水性が強く、消化管の水分を吸収して便の量をふやし、腸を刺激することで蠕動運動を活発にします。
現在、「おなかの調子をととのえる食品」として特定保健用食品の許可を受けている食品に活用されている食物繊維には、おもに以下のものがあります。
◇不溶性食物繊維
・小麦ふすま/小麦の皮と胚芽(はいが)。小麦を精白したときにカスとしてでるものです。
◇水溶性食物繊維
・難消化性デキストリン/でんぷんを部分加熱し、分解したあと、アミラーゼで加水分解し、脱色、脱塩して調製したものです。
・グアーガム分解物/インド地方のマメ科の植物のグアーからとれるグアーガムを酵素処理したものです。
・ポリデキストロース/トウモロコシ由来のブドウ糖、ソルビトール、クエン酸を減圧加熱し、精製したものです。
・低分子化アルギン酸ナトリウム/コンブから抽出したアルギン酸を加熱加水分解して低分子化し、溶解性を高めて調製したものです。
・サイリウム種皮/オオバコ科の植物の種皮の外皮を粉砕して調製したものです。
○注意すべきこと
ただし、食物繊維は栄養素を吸着する作用もあるので、とりすぎるとビタミンやミネラルの吸収を阻害することにつながります。食品ごとに表示されている1日あたりの摂取量を参考にし、過剰摂取しないようにしましょう。また、これらの食品は炭酸ガスを発生する菌をふやすことになるので、ガスがたまりやすく、おなかが張(は)る人は多食に注意してください。
おなかのちょうしをととのえるしょくひん【おなかの調子をととのえる食品(具体的な商品名)】
食後に血液中にブドウ糖が供給されると、ブドウ糖の濃度が上昇し、いわゆる「血糖値が上がる」状態になります。そこで、膵臓(すいぞう)のランゲルハンス島の細胞からインスリンというホルモンが分泌(ぶんぴつ)され、ブドウ糖を細胞に渡す働きが活発化し、血糖値を通常にもどします。
このように、健康な人の場合は、インスリンが正常に働くので、血液中に糖が供給される速さと、消失される速さのバランスが保たれています。
ところが、糖尿病の場合は、インスリンの分泌量が十分でなかったり、うまく働かなくなるため、高血糖の状態が続き、尿にまで糖がでてしまうわけです。
〈食後に血糖値が急激に上昇するのを抑える成分〉
「血糖値が気になり始めた方の食品」には、インスリンの働きをサポートする役割をになう成分が利用されています。それはおもに「難消化性デキストリン」と呼ばれる食物繊維です。
これは馬鈴薯(ばれいしょ)でんぷんを加水分解したあと、酵素処理をしてつくられた水溶性の食物繊維です。食事のときに摂取すると、胃の中で水分を吸ってふくらみ、胃から腸への食物の移動を遅らせます。さらに腸内で粘性の高いゲル状にかわり、糖質の消化吸収を遅らせるので、血糖値の急激な上昇を抑えるのです。その結果、インスリンの分泌を節約し、過剰な分泌を防ぐことができます。
ほかに利用されている成分として、次のようなものがあります。
・小麦アルブミン/小麦粉に含まれるたんぱく質を精製した成分。でんぷんをブドウ糖に分解するα(アルファ)―アミラーゼという酵素の働きを抑えるため、でんぷんがブドウ糖にかわるのを防ぎ、血糖値の上昇を抑えます。
・L―アラビノース/トウモロコシや米、麦などの穀物やリンゴなどにも含まれている糖類の一種。
ふつうの砂糖とちがい、小腸での吸収率が低いため、食後の急激な血糖値上昇を抑えます。
・グァバ葉ポリフェノール/グァバ葉から得られるポリフェノール。糖質のなかの麦芽糖(ばくがとう)を分解するマルターゼ、しょ糖を分解するショクラーゼ、でんぷんを分解するα―アミラーゼという酵素の分解作用を阻害し、血糖値の上昇を抑えます。