オフショアセンター(読み)おふしょあせんたー(英語表記)offshore financial center

デジタル大辞泉 「オフショアセンター」の意味・読み・例文・類語

オフショア‐センター

offshore financial centerから》非居住者(国内に住所を持たない人など)に対して、その国の経済規模と不釣り合いな規模で金融サービスを提供する国や地域。国内の金融市場とは切り離され、制約の少ない自由な取引が認められている。英領バージン諸島ケイマン諸島バハママルタバミューダ諸島ジャージー島マン島ガーンジー島モーリシャスジブラルタルキプロスなど。オフショア金融センター

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「オフショアセンター」の意味・わかりやすい解説

オフショアセンター
おふしょあせんたー
offshore financial center

金融取引に対する法規制、税制、為替管理などを緩和・撤廃し、国際金融取引の拠点となっている地域。一般的に源泉所得税は課されず、金融取引の秘密が厳守され、通信インフラなどが整備されている地域をさす。オフショアは岸(shore)から離れた地域(off)、転じて海外という意味で、オフショアセンターには国内規制の届かない金融取引拠点という意味がある。1960年代にアメリカが外国企業などに対する利子平衡税を導入したため、ロンドンを中心に非居住者の金融取引市場であるユーロ市場が成長。金融機関がより自由でコストの安い地域を求めて拠点を開設する動きが広がり、世界にオフショアセンターが相次いで誕生した。海外投資家や外国企業の資産管理を受け入れるため、各国政府が金融緩和特区などを設ける動きが広がったことも開設を後押しした。

 ロンドン、ニューヨーク香港シンガポールのほか、スイスルクセンブルクバーレーン、バハマなど世界には40か所以上のオフショアセンターがある。オフショアセンターには、国内取引と外国人同士の取引のいずれに対しても金融規制が緩やかな「内外一体型」、国内取引とは遮断して外国人同士の金融取引のみを自由化した「内外分離型」、税制上の優遇措置により国際金融取引の記帳のみが行われる「租税回避地型(タックス・ヘイブン型)」の大きく三つのタイプがある。内外一体型にはロンドン、香港などが該当し、ニューヨークや1986年(昭和61)発足の東京オフショア市場(Japan Offshore Market)は内外分離型である。タックス・ヘイブン型にはヨーロッパのイギリス領マン島、ジャージー島のほか、カリブ海域のバハマ諸島、バーミューダ島、ケイマン諸島、イギリス領バージン諸島などがある。

 しかしオフショアセンターは、マネー・ロンダリング温床となっていると懸念されているほか、ヘッジファンドによる取引を通じて国際金融の波乱要因になっているとの批判があり、G20(主要20か国・地域)首脳会議、経済協力開発機構(OECD)、国際通貨基金(IMF)などは監視強化を主張している。

[編集部]

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知恵蔵 「オフショアセンター」の解説

オフショア・センター

非居住者からの資金調達及び非居住者に対する資金運用、いわゆる外‐外取引を金融規制、税制などの面で優遇することによって、より自由かつ活発に行わせる市場。1960年代に米国の利子平衡税の導入などでユーロ市場が拡大し、金融機関の間の競争が激化、より自由で低コストの地域を求めて子会社・支店を設置する動きが相次いだこと、及び各国当局側においても国際金融取引における各国市場の地位向上を目指して積極的に対応したことなどから、各地にオフショア・センターが出現した。ロンドンや香港のように、国内取引に対する規制が緩やかであったことから自然発生的に成立したもの(外‐外取引と国内取引との差別がないため、内外一体型といわれる)、ニューヨークIBFや東京オフショア市場(JOM:Japan Offshore Market)のように、外‐外取引は原則自由だが国内取引との間に遮断措置(国内取引と分離した特別な勘定を設ける)を講じたもの(内外分離型)、税制上の優遇措置により、国際金融取引の記帳のみが行われるタックスヘイブン型、の3つがある。金融安定化フォーラムはオフショア・センターを国際金融の波乱要因として、国際基準遵守状況の適切な評価などの必要性を説いている。

(絹川直良 国際通貨研究所経済調査部長 / 2007年)

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百科事典マイペディア 「オフショアセンター」の意味・わかりやすい解説

オフショア・センター

国内市場と切り離した形で,非住居者の資金調達や運用を,金融,税制,為替管理などの規制の少ない自由な取引として認める仲介市場(センター)。オフショア市場の形態は,(1)国内市場との間の資金交流が自由で,両市場での諸規制が同等なロンドン型,(2)国内市場との間に各種規制上の格差があり,資金交流が遮断されている内外分離型(ニューヨーク,シンガポール,バーレーン,ルクセンブルク等),(3)租税逃避だけを目的に設立されたペーパー・カンパニーが主体で事実上金融市場とはいえないタックス・ヘイブン型(バハマ,グランド・ケイマン等)の3つのタイプに分けられる。日本でも円の国際化,東京市場の国際化を推進するため,1986年12月東京オフショア市場(JOM)が創設された。1990年代に入ってタイがオフショア・センターを創設したほか,中国の上海にも開設構想が出ている。

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世界大百科事典(旧版)内のオフショアセンターの言及

【国際金融市場】より

…今日,ロンドンはユーロダラー市場の中心地であり,パリやフランクフルトにも活発なユーロカレンシー市場が存在する。その結果,ドル金融をロンドンに奪われたアメリカは,非居住者間の金融取引に租税や為替管理上の特典を与えているオフショア・センターoffshore centerとして,1981年ニューヨークに国際金融ファシリティInternational Banking Facilities(略称IBF)を設立した。またオフショア・センターはバハマ,ケイマン諸島,パナマ,バーレーンなどがタックス・ヘイブン(租税回避地)として,またアジアダラー市場としてはシンガポール,香港が急速に発展してきている。…

※「オフショアセンター」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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