改訂新版 世界大百科事典 「利子平衡税」の意味・わかりやすい解説
利子平衡税 (りしへいこうぜい)
interest equalization tax
国際収支の改善を目的としてアメリカで1960年代初めから行われた資本流出規制策の一つであり,対外投資の生む利子所得に対して課税するものである。これは貯蓄が海外へ流出することなく,国内の投資に向けられることを狙ったものでもあった。62年ころからの大幅な資本収支の赤字に悩まされていたアメリカでは,ケネディ大統領が63年7月に利子平衡税を提案した(発効は1964年9月)。これはアメリカ国内で発行される外国証券に対し,年率1%の利子率に相当する税を徴収するものであり,アメリカ人にとっての税引後の収益率を低く抑えることによって外国証券取得を減少させようとしたものである。しかし,アメリカで証券を発行する以上,アメリカの他の国内証券と同様の収益率を最終的には保証しなければならず,税は発行者によって負担されることになった。その結果,コストの高いアメリカでの起債は減り,ヨーロッパ市場での起債が増え,ユーロダラー債市場の発展を促進した。利子平衡税によってアメリカ人の外国証券取得は64年には減少したものの,形を変えた資本流出は続いた。銀行による長期貸付けが増加したのにともない,65年2月には期間1年を超える銀行貸付けにも利子平衡税が課されることになった。しかし,この税だけでは資本流出を十分に防ぎきれず,自主的な量規制も試みられたが,高度に発達し統合されたアメリカとヨーロッパの資本市場において資本の移動を阻止することは困難であった。そののち,ニクソン大統領は利子平衡税を年率0.8%に下げ,さらに主要国による変動相場制移行後の74年1月,この税は他の資本流出規制策とともに全廃された。
執筆者:平山 健二郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報