日本大百科全書(ニッポニカ) 「カグラコウモリ」の意味・わかりやすい解説
カグラコウモリ
かぐらこうもり / 神楽蝙蝠
Ryukyu leaf-nosed bat
[学] Hipposideros turpis
哺乳(ほにゅう)綱翼手目カグラコウモリ科の動物。八重山(やえやま)列島の特産種で、石垣島、西表島(いりおもてじま)、与那国島(よなぐにじま)にのみ分布する。頭胴長7.9センチメートル、前腕長6.9センチメートル、翼開長35センチメートル以上。キクガシラコウモリに似て鼻葉は前・中・後の3葉からなるが、キクガシラコウモリにみられる中央突起を欠く。後鼻葉は複雑で、その後縁には3突起があり、波状をしている。雄には後鼻葉の後方にろうのような黄色っぽい分泌液(働きについてはよくわかっていない)を出す前頭嚢(ぜんとうのう)が発達する。後ろ足の指骨は各2個で、これもキクガシラコウモリの3個と異なる。体表面の前半部は淡い黄褐色で、後半部は濃いセピア色をしている。洞穴に群れで生息し、ときに2000頭近くの大群をつくる。日没前にねぐらを離れて採食場に向かい、昆虫を捕食する。
本種が属するカグラコウモリ科のものはアジア南部、オーストラリア、アフリカの熱帯・亜熱帯に分布し、約60種が知られる。台湾、中国からインドにかけては、タイワンカグラコウモリH. armigerがすむ。
[吉行瑞子]