日本大百科全書(ニッポニカ) 「カコクセン石」の意味・わかりやすい解説
カコクセン石
かこくせんせき
cacoxenite
第二鉄、アルミニウム(Al)の含水塩基性リン酸塩。Fe3+24Al[(OH)12|O6|(PO4)17]・75H2Oの式が示すように、少量のアルミニウムは必須(ひっす)成分となっている。また[PO4]と独立の酸素が、O、OH、H2Oと3種類の形で存在する。自形は六角柱状。これが放射状集合をなし、最終的には球顆(きゅうか)を構成する。産状は3種類に大別される。鉄分に富む珪質堆積物(けいしつたいせきぶつ)あるいは堆積岩中の団塊の主成分をなし、また細脈をなす。各種磁鉄鉱鉱床の酸化帯に生成される。いわゆるリン酸塩ペグマタイトの最末期の生成物となる。日本では岐阜県大垣市昼飯(ひるい)のチャートの採掘場で細脈をなすものが知られている。
共存鉱物は針鉄鉱、磁鉄鉱、石英のほか、リン酸塩としては燐(りん)鉄鉱、銀星石、ロックブリッジ石rockbridgeite(化学式Fe2+Fe3+4[(OH)5|(PO4)3])、バリシア石などがある。同定は形態や集合状態が観察されれば比較的容易である。微細なものでも顔料のように比較的鮮やかな色と被覆力があり、野外でも水酸化第二鉄のしみなどとは一見して区別できる。比重は非常に小さい。英名は「たちの悪い客」を意味するギリシア語κκς ξυος(cacos xenos)にちなむ。カコクセン石が混入すると精錬して作られた鉄の性質が劣化することによる。
[加藤 昭]