カストル(読み)かすとる(英語表記)Castor

翻訳|Castor

デジタル大辞泉 「カストル」の意味・読み・例文・類語

カストル(〈ラテン〉Castor)

双子座αアルファ。銀色に輝く1.6等星で、距離は51光年。有名な連星。→ポルックス

カストル(Kastōr)

ギリシャ神話で、ゼウスレダの子で、双子神(ディオスクロイ)の一方。他方はポリュデウケス、ラテン名ポルックス。ともに、航海の守護神

カストル(Castres)

フランス南西部、オクシタニー地方タルヌ県の都市。アグー川沿いに位置する。13世紀から14世紀にかけて織物業が発展。旧市街の中心部に、ベネディクト派修道院跡に建てられたサンブノア大聖堂とゴヤ美術館がある。

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精選版 日本国語大辞典 「カストル」の意味・読み・例文・類語

カストル

  1. ( [ラテン語] Castor ) 双子座のα(アルファ)星。複雑な連星系を構成する。ギリシア神話では大神ゼウスの子で、ポリュデウケス(ラテン名ポルックス)と双生児。ローマ時代には双子座のβ(ベータ)星ポルックスとともに航海者の守護星として崇拝された。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「カストル」の意味・わかりやすい解説

カストル(ふたご座)
かすとる
Castor

ふたご座のα(アルファ)星。ギリシア神話の大神ゼウスの息子で、双子の兄の名前「Kastor」に由来。日本のいくつかの地方では、双子の対の星(ポルックス)とともに「二つ星(ふたつぼし)」「二星(にぼし)」などとよばれる。実視等級1.6等で青白い輝きを放っている。距離は52光年。天球上の位置は、2000年分点の座標で赤経7時35分、赤緯プラス31度53分。日本では冬の宵に天頂付近を通る。カストルは六重連星という珍しい星である。望遠鏡で見ると、1.98等のカストルA星と2.88等のカストルB星とが実視連星系をなし、420~500年の周期で共通重心の周りを公転している。少し大きな望遠鏡で見ると、このA、B2星から角度で73秒離れたところに、光度9.0等の赤みがかったカストルC星があり、A、B2星の周りを公転している。公転周期は数万年以上と思われる。著しい特徴として、A、B、Cの3星とも連星であることが知られている。A星は公転周期9.21日の分光連星主星(Aa星)はスペクトル型A1Vの主系列星で、表面温度約9300K、質量は太陽の約2.2倍、半径は2.3倍程度、伴星(Ab星)はスペクトル型が不明だが、質量は太陽の半分程度と推定されている。B星は公転周期2.93日の分光連星。主星(Ba星)はスペクトル型A2Vm、すなわち主系列の金属線A型星で、表面温度9000K程度、質量は太陽の約1.7倍、半径は1.6倍程度、伴星(Bb星)はスペクトル型不明で、質量は太陽の半分程度と見積もられている。C星は公転周期0.814日の分光連星かつ食連星であり、ふたご座YY星という変光星名をもつ。主星、伴星ともスペクトル型M1Veの主系列星で、表面温度はともに約3700K。主星(Ca星)の質量は太陽の0.62倍、半径は0.76倍、伴星(Cb星)の質量は太陽の0.57倍、半径は0.68倍。両星とも表面活動が盛んなために、ときどき爆発(フレア)をおこし、すこし明るくなることがある。

岡崎 彰]



カストル(ギリシア神話)
かすとる
Kastōr

ギリシア神話の双子神ディオスクロイの一人。母はレダ。父はゼウスとも、ティンダレオスともいわれる。またティンダレオスの子であることから、カストルは人の子として死ぬ運命にあったという。彼は戦術に優れ、乗馬も巧みであった。叔父のレウキッポスの娘ヒラエイラを略奪して妻とし、アノゴンを得た。

[伊藤照夫]


カストル(フランス)
かすとる
Castres

フランス南西部、タルン県にある商工業都市。アグー川の河畔にあり、人口4万3496(1999)。染料植物と水に恵まれ、13~14世紀以来、織物業の中心として栄えてきた。織物機械、製材、家具製造業も盛ん。ゴヤ博物館がある。

[青木伸好]

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改訂新版 世界大百科事典 「カストル」の意味・わかりやすい解説

カストル
Castor

ふたご座のα星。カストルはゼウスの双子の息子のうちの一人である。α星ではあるが,ふたご座では2番目の明るさであり,β星のポルックスのほうが明るい。実視3重連星で,明るい2星は,約380年周期で公転し,3番目の天体はそれらのまわりを遠く離れて回っている。これら三つの一つ一つが分光連星でもあるから,実際は6重連星である。概略位置は赤経7h35m,赤緯+31°53′。午後9時の南中は3月初旬。スペクトル型は,カストルAがA1,カストルBがA2であり,カストルCはM1である。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カストル」の意味・わかりやすい解説

カストル
Castres

フランス南部,ローラゲ地方,タルン県の都市。セベンヌ山地西側に発して北西流してタルン川に合流するアグー川の中流にのぞむ。ローマの駐屯地が町の起源で,ベネディクト会修道院 (647) が開かれて町の基礎ができ,中世以来,後背山地のヒツジの飼育地帯と前面平野の染料供給地の接点にあたり,しかもアグー川の清水に恵まれるという立地条件によってプロテスタントの技術者を受け入れ,毛織物の中心として発展した。ナント勅令廃止に伴うプロテスタントの他国への移住により 17世紀には打撃を受けたが,近代に入って再興し,現在でも毛織物が主産業である。そのほかに織機,工具,染料などの関連工業も立地し,薬品工業も重要。また周辺農産物の大集散地でもある。 12世紀の要塞塔,17~18世紀の聖堂など中世以来の建築物が多く残っているが,旧司教館の市立美術館はゴヤの収集により特に有名。人口4万 6292 (1990) 。

カストル
Castor

ふたご座α星 (α-Gem) の固有名。実視等級 1.6等で,β星のポルックスより暗い。スペクトル型は A1の矮星。三重連星で,そのおのおのが連星なので,計6個より成る星系の総称ということになる。

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百科事典マイペディア 「カストル」の意味・わかりやすい解説

カストル

ふたご座のα星。α星だが,β星のポルックスのほうが明るい。実視3重連星で,三つの一つ一つが分光連星なので,実際は6重連星。
→関連項目ふたご(双子)座

カストル(神話)【カストル】

ディオスクロイ

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世界大百科事典(旧版)内のカストルの言及

【香料】より


[天然香料]
 天然物を原料とするもので,動物性香料と植物性香料に分けられる。動物性香料は動物の生殖腺分泌物などから溶剤によって抽出された体内生成物で,麝香(じやこう)(ムスク),霊猫香(れいびようこう)(シベット),海狸香(かいりこう)(カストル),竜涎香(りゆうぜんこう)(アンバーグリス)などがあり,その種類や生産量はきわめて少ない。いずれも高価で,高級香水の成分として用いられる。…

【ディオスクロイ】より

…ギリシア神話の双子の兄弟,カストルKastōrとポリュデウケスPolydeukēs(ラテン語ではポルクスPollux)のこと。しばしば兄弟愛の典型とされる。…

※「カストル」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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