改訂新版 世界大百科事典 「カベーリン」の意味・わかりやすい解説
カベーリン
Veniamin Aleksandrovich Kaverin
生没年:1902-89
ソ連邦の作家。プスコフで音楽家を父として生まれる。1920年代の初頭にペトログラード大学と東洋語大学に学ぶ。このころからトゥイニャーノフ,ザミャーチンなどの影響下に小説を本格的に書き始め,E.T.A.ホフマンの崇拝者の文学グループ〈セラピオン兄弟〉に加わる。ここではルンツLev Lunts(1901-24)とともに〈西欧派〉に属し,小説の形式面の実験を重視した。処女短編集《師匠たちと弟子たち》(1923)は,初期の若々しい実験精神を示す幻想的小説集である。その後,ソ連の社会的現実にも目を向けていき《巣窟の崩壊》(1925),《願望の成就》(1936),《二人の船長》(1944),《開かれた本》(1956)などの小説を書いた。晩年には膨大な自伝的回想《照らされた窓》(1975)を発表し,幻想的童話集《ニェムーヒン物語》(1979)を完成させた。そのかたわら,ソ連文壇の“民主化”にも努めた。
執筆者:沼野 充義
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報